巨大なコルクのような化石「悪魔の栓抜き」の意外な正体

画像は、Wikipediaより引用

 アメリカのネブラスカ州ハリソン近くの遺跡から発見された螺旋状の奇妙な化石。これまでに発見された最も珍しい化石の一つとして知られ、およそ1500万年から3000万年前に作られたものであると考えられ、その500平方キロメートル範囲から数百万本も発見された。

 この化石は1890年ごろ、ワイオミング州とネブラスカ州のロッキー山脈にあるバッドランド で、化石調査を行なっていた探検隊の一人、古生物学者・地質学者アーウィン・H・バーバーによってはじめて発見された。 彼はネブラスカ州産の哺乳類の化石コレクションの土台を築いた人 物であったが、発見した螺旋状の化石については、「見事としか言いようがない。左右対称のつり合いは完璧で、私の理解をまるで超えている」とその著書に記すほど驚きを隠せなかった様子であった。

 その化石は、左巻きや右巻きと様々であるもののしっかりとした螺旋を形成しており、いずれも高さ2メートルを超えて中には4メートル以上にも及んでいる。しかし、この化石がどのように作られたものであるのか、何のために作られたものであったのかについては、不明なままであった。この奇妙かつ完璧とも言える形状により、地元では「デビルスコークスクリュー」「ダイモネリクス」 ちなわち「悪魔の栓(コルク)抜き」と呼ばれて恐れられるようになったという。

 はじめにその正体について推測を行なったのは発見者であるバーバーであった。彼は、螺旋の内部から植物組織が発見されたことに着目し、「巨大な淡水海綿の化石」ではないかと考えたのである。この他、石化した蔓(つる)や巨大なミミズといった説なども浮上し、さらには宇宙人によってもたらされた道具、数百年前に存在していた高度な古代文明の物品、といった憶測まで飛び交うこととなった。

 しかし、その後になって意外な説が浮上してきた。脊椎古生物学者エドワード・ドリンカー・コープが、この化石について「大型齧歯類の巣穴のあと」だと主張したのである。この発表と同時期、 オーストラリアの古生物学者セオドア・フックスもコープ同様、「中新世期の齧歯類の地下の巣穴」であると結論付けたのだ。のちに、古代のビーバー「パラエオカストル」 の骨も化石から多く発見されたこと、さらに、巣穴説の内部に残っていた溝がその生物の門歯と一致したことによって、裏付けが一挙に高まることになったのだ。

 ところが、はじめに植物の化石だと主張したバーバーは、これらの巣穴説に対して「これほど正確な形状を形作った生き物には永久不滅の記念碑でも建てなければならない」と言って、頑なに否定し続けたという。生涯に渡って巣穴説を否定し続けた彼であるが、彼の教えを受けた学生や後継者を含め、現在ほとんどの研究者は巣穴説を支持する状況となっている。なお、内部で発見された植物の組織は、螺旋状のトンネル内にたまった水分や湿気によってもたらされたものであると考えられている。現在では、ほぼほぼ決着がついたと考えられている化石であるが、この一連のストーリーで際立つのは頑として自身の主張以外を退け 続けた研究者の姿であろう。自らの持論に絶対の自信があったのか、それとも発見者たる自身のプライドから持論に固執し続けたのか、研究者の態度として如何様に見るかがこの出来事の副次的な問題で あるのかもしれない。

【参考記事・文献】
2000万年以上前の螺旋状の化石「悪魔のコルク抜き」 の謎に迫る
ネブラスカの巨大らせん「悪魔のコルク栓抜き」とは!? 3000万年前の超古代文明が関与? 予想外の作成者に仰天

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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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