謎の急死を遂げた若き女性起業家…死の直前に告げた『私たちはマトリックスの中にいる』という言葉の意味とは
若き敏腕女性起業家の謎の急死をどう理解すればよいのか――。彼女が電話で口にした最後の言葉には「私たちはマトリックスの中にいる」という含意あるフレーズがあった。
■急死した女性CEO「私たちはマトリックスの中にいる」
当時33歳のエリン・ヴァレンティは、ウェブサイトやスマートフォンアプリを開発するテクノロジー企業「Tinker(ティンカー)」のCEOできわめて優秀な人物であった。米ニューヨーク州フェアポート出身のヴァレンティは、夫とともにユタ州ソルトレイクシティに住んでいた。
2019年10月1日、ヴァレンティはソルトレイクシティからカリフォルニアのシリコンバレーに飛び、「Create Powerful」という3日間のセミナーに参加し、その後はベイエリアのモントレーを訪れて創業者と投資家のための2日間の会議に出席した。
ビジネスの予定をすべて終えた直後、ヴァレンティは実家に電話をかけているのだが、その話はいつになく早口で意味が不明瞭であり、母親を困惑させたのだった。
ヴァレンティは電話口で「これはすべてゲームで、思考実験で、私たちはマトリックスの中にいるのよ」と話したのだった。
その電話の5日後の10月12日、ヴァレンティはサンノゼの住宅街でレンタカーの後部座席で死亡しているのが地元住民によって発見された。サンノゼ警察の捜査では遺体には不審に思えるものは見つからず、外傷や衣服の乱れなどもなかった。血液検査では一般的な処方薬などの薬物反応は陰性であった。
両親や夫をはじめ彼女の周囲の人物からの証言では、ヴァレンティは精神疾患の診断を受けたこともなければ薬物使用もないということである。
サンノゼ検死官事務所の検死報告書では、彼女は「急性躁病発作(manic episode)による突然死」で死亡したと判定され、彼女が“自然死”したということ以外、何が死因となったのかは説明されなかった。
精神疾患の病歴のない成功したハイテク企業のCEOである健康な33歳の女性が突然、死に至らしめるほどの躁病を発症するというのはきわめてレアなケースといえるだろう。本当に死因は精神疾患だったのか。
気になるのは彼女の“マトリックス”発言である。
テック分野企業のCEOとしてヴァレンティのビジョンには人間の脳とコンピューターを非侵襲的に結びつけるインターフェイスの開発が思い描かれていたともいわれており、たとえばシリコンバレー滞在中にひょっとすると彼女自ら何らかの技術開発の“実験台”になることがあったのかもしれない。
この世が“マトリックス”であるという「シミュレーション仮説」は2003年にオックスフォード大学のニック・ボストロムが提唱して以降、徐々に支持を集めており、NASAの物理学者、トーマス・キャンベルやイーロン・マスクもその支持者であるといわれている。
はたしてヴァレンティの精神はすでにマトリックスの世界にアップロードされ、もぬけの殻となった肉体がレンタカーに残されたのだろうか。その疑問はマトリックスの“舞台裏”を垣間見ることができればすぐさま氷解するのだが……。
参考:「Howandwhys」ほか
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