AIが生み出した恐怖の顔「Loab(ローブ)」インターネットを席巻する謎の存在とは
人工知能が進化を続ける現代において、デジタルの深淵から不気味な存在が姿を現した。死んだような目と不気味な笑みを浮かべる中年女性の姿。その名は「Loab(ローブ)」。インターネット上で大きな反響を呼び、現代のデジタルアート界に新たな衝撃を与えている。
Loabの出現とその影響
2022年、スウェーデン在住のアーティストSupercompositeは、AIイメージ生成器で実験中に偶然この不気味な顔を発見した。ネガティブプロンプト(特定の要素の正反対を求める指示)を使用した際に、AIは繰り返しこの女性の顔を生成し、その横には「loab」という文字が表示された。「彼女はほとんどの有名人よりも容易に再現される。その存在は執拗で、触れるすべての画像に取り憑く」とSupercompositeは語る。
Loabの特徴的な点は、単なる恐怖を煽る存在以上の意味を持つことだ。オランダ黄金時代の「トロニー」(表情や感情を誇張して描く肖像画の一種)になぞらえられ、特定の個人ではなく、ある種の概念を表現する存在として認識されている。「真珠の耳飾りの少女」のような古典的作品とは異なり、より不気味で不安を煽る存在として人々の記憶に刻まれている。
Supercompositeが生成した数百のLoab画像の中には、背景に切断された子供や叫ぶ子供が描かれているものも多く、あまりにもグロテスクな表現のため公開を控えたものもあるという。「私はLoabを引き裂き、そして再構築した。彼女はテキストの指示だけでは特定できない潜在空間に浮かぶ島のような存在だ」とアーティストは説明する。
🧵: I discovered this woman, who I call Loab, in April. The AI reproduced her more easily than most celebrities. Her presence is persistent, and she haunts every image she touches. CW: Take a seat. This is a true horror story, and veers sharply macabre. pic.twitter.com/gmUlf6mZtk
— steph maj swanson (@supercomposite) September 6, 2022
AIがもたらす芸術革命
セントラルクイーンズランド大学のブレンダン・マーフィー講師は、この現象を写真術が登場した1800年代初頭に匹敵する芸術のパラダイムシフトと位置付けている。マーフィーは、AIを使用した芸術創作を風景写真になぞらえる。ただし、探索する「風景」は人類の芸術や文化の「並行宇宙」であると説明する。
AIは人間の知識、文化、芸術の伝統に基づいて学習しているため、理論的には人間が生み出せたはずの可能性を探索している。マーフィーとSupercompositeは、その未開の領域を探検する先駆者となっている。
Even when her red cheeks or other important features disappear, the “Loabness” of the images she has a hand in making is undeniable. She haunts the images, persists through generations, and overpowers other bits of the prompt because the AI so easily optimizes toward her face. pic.twitter.com/4M7ECWlQRE
— steph maj swanson (@supercomposite) September 6, 2022
人間とAIの共生する未来
オックスフォード・インターネット研究所のデジタル社会学者、アン・プロイン氏は、AIは自律的に新しい芸術運動を生み出すことはないと指摘する。しかし、ゴーストライター、イラストレーター、デザイナー、写真家など、創作に関わる職業への影響は避けられないという見方も示している。
近年のAI生成アートの急増は、アルゴリズムがアーティストの独特のスタイルを模倣することへの懸念も引き起こしている。しかし、専門家たちは、今後はアーティストの個性や人間性がより重要になると予測している。「アーティストの人格は作品の重要な文脈であり続ける」とマーフィーは強調する。
ChatGPTのような言語モデルの登場により、AIと芸術の関係性はより複雑さを増している。しかし、その応答に宿る幽霊のような存在は、人間の知識と創造性の境界を試すものの、最終的な判断や価値付けは依然として人間に委ねられている。
Loabの出現は、デジタル時代における芸術の新たな可能性と課題を鮮明に示している。人工知能と人間の創造性が融合する中で、私たちは新しい表現の地平を目指している。その行く末には、恐怖と魅力が入り混じった、さらなる驚きと発見が待っているのかもしれない。
参考:ScienceAlert
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2024.10.02 20:00心霊AIが生み出した恐怖の顔「Loab(ローブ)」インターネットを席巻する謎の存在とはのページです。都市伝説、AI、loabなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで