早稲田卒の風俗嬢、そして歌人。心の叫びを綴った短歌とともに振り返る、壮絶人生とは?   ~雪森ゆかりインタビュー~

早稲田卒の風俗嬢、そして歌人。心の叫びを綴った短歌とともに振り返る、壮絶人生とは?   ~雪森ゆかりインタビュー~の画像1画像は、『White Pain』(ブイツーソリューション)

 カトリックの女子校に通いながらの、援助交際。大学生で、バイト先のパチンコ店で知り合った男と同棲して、出産。夫となると、暴力を振るうようになった男。出口を見つけながら、ピンサロやソープランドで働く日々。

 絞り出すように綴られてきた歌が、歌集『White Pain』(星雲社)としてまとめられた。

 作者の、雪森ゆかりに話を聞いた。

「純潔を破れば死ぬ」とう祖母の嘘 我が神童なることも嘘

 

――高校生で援交に走るようになったのは、なぜですか?

雪森ゆかり氏(以下、雪森) 祖母の締め付けが凄かったんです。祖母は詩吟の先生だったんですけど、お弟子さんに神仏の話をして、「私の言葉はご神仏様の言葉」と言って、実質、宗教でした。子供の頃から植え付けられていたので、本当にそれが真実だと思い込んでいたんです。お前は神仏の子だから、末は博士か大臣かって言われてました。

 ある日、「処女を捨てたらお前は神仏の罰が当たって死ぬ」って言われた。祖母の言葉が本当かウソか実証しようと思ったんです。それで伝言ダイヤルにかけたのが最初。それで結局、死ななかった。なんだウソじゃん、ってなって、それからは伝言ダイヤルにはまりました。

 

女子校の学生証を武器として春売る我はエンコー少女

 

早稲田卒の風俗嬢、そして歌人。心の叫びを綴った短歌とともに振り返る、壮絶人生とは?   ~雪森ゆかりインタビュー~の画像2

――カトリックの女子校に通ってての援交に、葛藤はなかったですか?

雪森 なかったですね。精神的に煮詰まった人がリストカットとかするじゃないですか。私はたまたま、性非行に行ったっていうことなんです。一回やって、2万、3万もらっちゃうと、学生として大金。金銭感覚がずれてって、ちょっとイラッとしたことがあると、すぐ伝言に電話をするみたいな感じでしたね。

「産んでいい?」こわごわ訊けば「どっちでも俺はいいよ」と言われてしまう

 

――ダンナさんとの出会いは、どんな感じだったんですか?

雪森 東京理科大学にいた時に、学校に行かないでパチンコ屋でバイトをしてたんですね。そこの同僚だったんです。そのうち彼が、遅刻が多いとかで、クビになったんです。それで、「今までありがとう」っていう手紙を渡したら、「付き合おう」って。彼は寮に住んでたので、うちに転がり込んできて同棲が始まりました。

 それで、妊娠したんですよ。ぎりぎりまで悩んだんですけど、堕ろすっていう選択をしなかったのは、中高生をカトリックの学校で過ごしたから。自分の胎内にいるとは言え、命を殺めることを選択できるのかって、哲学的に詰めてしまった。やっぱりこれは堕ろしてはいけないと思いました。

 でも、このまま私の人生どうなるの、と悩んで、ちょっと文学のほうに賭けてみようと思って、産んだ直後に、早稲田大学第二文学部の受験を決めたんですよ。97年の10月に出産して、試験が98年の2月。4カ月勉強して受かりました。

大学は人種のるつぼ しかあれど学生ママの友人居らず

 

――そこで短歌との出会いがあったわけですね

雪森 早稲田大学第二文学部の創設50周年記念文芸賞というのを募集していて、小説は100枚、短歌、俳句は30首だったんです。小説100枚は厳しいけど、短歌30首なら何とかなるかなと思って応募したら、入選しました。まったく、初めて作った短歌です。審査員の1人だった佐佐木幸綱先生と知り合って、結社に入って短歌を続けました。

 その後、第一文学部に転部しました。祖母の神がかりとは違う哲学を知りたいと思って、哲学も文学もできるドイツ文学に行きました。転部は大変で、入試で一文に入るほうが簡単なくらい。試験はドイツ語と小論文だったんですけど、ドイツ語は1年間、語学研究所に通って死ぬほどやりました。もう忘れましたけど。

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