早稲田卒の風俗嬢、そして歌人。心の叫びを綴った短歌とともに振り返る、壮絶人生とは?   ~雪森ゆかりインタビュー~

 

「言葉では君に勝てないから殴る」切なきことを男は言えり

 

早稲田卒の風俗嬢、そして歌人。心の叫びを綴った短歌とともに振り返る、壮絶人生とは?   ~雪森ゆかりインタビュー~の画像3

――どんな生活だったんですか?

雪森 親の仕送りで生活してましたけど、ダンナは職が続かない人ですぐに辞めて、私にウソをついてパチンコをしているような人なんですよ。歳は4つ上ですけど、20個以上、仕事を変えている。こっちは子どもを抱えてむちゃくちゃ大変なのに、ある日突然「ごめん、仕事行ってない」とか。それで大喧嘩になって、子どももギャーって泣き出す。腹が立つんで、口で凄く言いますよね。私のほうがどうしても口が立つ。彼は口では勝てないからって手を出してきました。

「空きがあってよかったですね」空きが無ければ入れないのか女性シェルター

 

――ダンナさんの暴力は、かなりひどかった?

雪森 夜中にダンナと喧嘩になって、子どもを自転車のかごに乗っけて、警察に助けを求めたんです。女性シェルターを紹介されたんですけど、「空きがあってよかったですね」って言われた。必ずいつも空いてるわけじゃ無いんですよ。それじゃあ、苦しんでる女性全員は救えないじゃないか、って疑問を感じましたね。

精液と存在意義がイコールの方程式を飛び越えたくて

 

――風俗の仕事には、どうやって入っていったんですか?

雪森 就職の道を考えなかったんですよ。在学中にライターの講座に通っていて、そっちで身を立てようと思っていた。学校が終わったら、夜はピンサロでバイトをするという生活になりました。

 ある時、新宿を歩いていたらAVのスカウトに声をかけられたんです。AVには出られないって言ったら、じゃあソープランドがあるよって言われた。その日のうちに車で吉原に連れて行かれて、働くようになりました。

 風俗で働いていて、思ったことがひとつあるんです。お客さんから、「風俗嬢で皆を喜ばせてるんだから誇りを持たないとダメだよ」ってよく言われる。だけどそれは、半分本当で半分違うと思うんです。お金をもらうプロの職業人としてのプライドは持たないといけないけど、風俗嬢であることそのものにプライドを持ってしまってはダメなんです。風俗嬢であることにプライドを持つと、そこから上がれなくなるんですよ。風俗嬢であることが、自分の存在意義になってしまうので。

それぞれの空を仰ぎて二輪花いま咲き誇る革命の庭

 

――歌集を出してからの反響はどうですか?

雪森 歌壇的には、異色だと思うんです。歌壇の人って保守的で、学校の先生とか、医者の奥さん、企業に勤めている偉い人とかが多い。そういう今の保守的な歌壇には、黙殺されている感はあります。私が歩んできたような、アウトローみたいな人は今の歌壇にはいないんで。短歌は、恵まれた人の趣味になってしまってる。そういう現状を何とか覆したいんですけど、難しい部分があります。

白薔薇に誓いし愛の潔癖を信頼と呼ぶ 二度と泣かない

 

――今後の展望はどうですか?

雪森 私、「狭き門から入れ」という言葉が好きなんです。「狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。しかし、命に通じる門はなんと狭く、その道も細いことか。それを見いだす者は少ない」と聖書に書かれていますよね。

 私は風俗という広い門を入ってしまったので、これからは狭い門を目指そうと思います。そのために、着々と準備をしているところです。
(取材・文=深笛義也)

■雪森ゆかり(ゆきもり・ゆかり)
1976年生まれ。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒業。一度も定職に就くことなく、風俗業を転々とする。著書に『White Pain』(ブイツーソリューション)がある。

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1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)、『罠: 埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった』(サイゾー)がある。ほか、著書はコチラ
Twitter:@giyagiyagiya

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