自閉症を持つ子供の教育に“無表情で無感情”なロボット先生が大活躍!
■ロボットによって格段の進歩を遂げる子供たち
5歳のリビ・クーパーちゃんは「ベン」に会う前は、10分以上続けて集中する事が出来なかった。しかし、1週間に数回ベンと授業を受けて、リビの集中力は2倍長くなり、社会的なスキルや語彙も格段に進歩した。リビの教師のリチャード・ガーランド氏は「例えば、リビはロボットの身振りを見て、それが驚きか悲しみかを理解出来る様になりました。このスキルは実生活で必要とされるものです」と言う。6名の自閉症の生徒を受け持つガーランド氏は、リビがロボットによって明るくなったのを見るのは本当に素晴らしいと話す。
リビの父親、クーパー氏にはもうひとり7歳になる息子のオーウェンがいるが、彼も自閉症である。クーパー氏は「リビはロボットから沢山の事を学びました。学校から帰るとロボットとしたゲームの事を全部話してくれます」と語る。また「リビはこの6ヵ月で非常な進歩を遂げましたよ。学校もとても良いので、どこまでがロボットのおかげかは言えないが、大きな要因である事は確かです」と言う。クーパー氏は「私の妻と私はロボットが子供たちの大きな手助けになる事に驚いています。これらのテクノロジーに対して偏見はありません」と語る。
■自閉症研究チームがロボットを開発
バーミングハム大学の自閉症研究・リサーチセンターは、トップクリフ小学校と組んで2010年より研究を始めていた。その後、自閉症の子供の教育の為にロボットを開発していたアルデブラン・ロボティック社が加わり共同研究チームが発足した。アルデブラン・ロボティック社はロボットを250万円以上かけて制作、学校にロボットを寄付した。
研究チームは、生徒にとって役立つ提案を教師から得、常に新しい機能を開発している。例えば、教師がコンピューターに文章を書くとそれをロボットが話し、クラス全体とコミュニケーションをとれるようにした。さらに新しい機能では、ロボットと子供たちがしたゲームの結果や反応を記録することによって、生徒たちの進歩を教師と親がたどれるようになった。
トップクリフ小学校のコンピューター部門責任者であるベン・ウォーターワース氏は、「子供たちの示す進歩の中で最も愛らしいのは、初めはロボットを見て怖がっていた子供が、後にはロボットを親友と呼び可愛がるようになる事です」と言う。
子供とロボットがするゲームの中で人気なのはカード遊びである。ロボットが取るカードを指示し、子供が正しいカードを選ぶとダンスして「おめでとう!」と言う。もし間違えたら「残念、もっと上手にやれるよ」と励ます。
ウォターワース氏によると、これらの言葉は自閉症の子供との信用を高め、混乱させないようにいつも同じにしていると言う。これらの遊びは自閉症の生徒たちに聞く力、真似する力、順番を守る力、そして集中力を学ぶ為にとても手助けになると言う。これらの能力は他人と接する上で不可欠な能力である。
また自閉症児には人と目を合わせる事を嫌う傾向があるが、ロボットを使って「目を合わせる」訓練をする機能も開発された。それは、ロボットと目を合わせるとロボットは作動し、視線をはずすとロボットが停止してしまうプログラムがされている。子供たちは大好きなロボットと続けて遊びたいので、自然と「目を合わせる」行為を嫌がらないようになるという。
バーミンガム大学自閉症センターのディレクターであるカレン・グルバーグ博士は、平易な言葉を使い明確なコミュニケーションを行う事、時間をたっぷり与える事が自閉症の子供の教育に重要だと話す。ロボットはこれらの事が良くできるので、教室での自閉症児のコミュニケーションの助けとなる。グルバーグ博士は、よく練られたプログラムは、自閉症の生徒と普通児を一緒に学ばせるクラスでも役に立つだろうと話している。
私たちは同じ反応で同じ言葉しか話さない事を見下し「ロボットのようだ」と言う。 しかしこれを逆手にとり、自閉症の子供とのコミュニケーションに役立てるとは素晴らしい発想の転換ではないか!
(文=美加リッター)
参考:「Daily Mail」、「Telegraph」
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