性善説の崩壊 ― 生後15カ月の幼児も「倫理観<差別意識」だった【米・4つの心理実験】
【実験3→結果:幼児は善を好む】
またイェール大学の「Infant Cognition Center(乳児知覚センター)」のウィン教授が行った別の実験では、乳幼児に「良いぬいぐるみ」対「悪いぬいぐるみ」の指人形劇を見せた。すると、80パーセント近くの乳幼児は「良いぬいぐるみ」を好んだ。これは、乳幼児は早い時期から物事の善悪が理解できることを示す。
【実験4→結果:幼児は善より仲間意識を好む】
しかし、次の実験の結果は驚くものであった。まず乳幼児に2つのお菓子を見せてどちらかを選ばせる。次に、指人形にもお菓子を選ばせる。すると乳幼児は自分と同じお菓子を選んだ指人形に、より親近感を覚え、同グループという意識を持ったのだ。そして、自分と違うお菓子を選んだ「違うグループ」の指人形には親近感を示さない。さらに驚くのは、「自分のグループ」の指人形が「違うグループ」の指人形に悪い事をしても「自分のグループ」の指人形を好み続ける。
つまり、前の実験で示した「善悪への観念」を急に示さなくなってしまうのだ! そして違うグループの指人形は罰せられるのが当たり前だと言わんばかりの行動を見せるという。これには正直、驚くものがある。
■人間は、元々倫理的ではない
この実験をウィン教授と共に行っている同じくイェール大学のポール・ブルーム教授は、「人間は元来、そう倫理的ではない」と言い、また「自分と似ている人とグループになる事は、進化の過程上で必要だったのだろう」と結論を述べている。そしてだからこそ、その「本能」を抑える教育や知識が人間には必要なのだと言う。
この実験の結果をまとめると、まず人間はもともと自分と似ている人を好み、「自分たち」対「あの人たち」というグループ観念を乳幼児の時から既にもっている。赤ちゃんや子どもは天使のようにきれいな心を持っていると一般には言われてきた。しかし、この実験を見る限り、人間はもともと黒い部分も持ちあわせて生まれてきたらしい。
性善説を信じる者からすると、ちょっとがっかりする結果ではないか!
(文=美加リッター)
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