夢の“透明人間マント”完成間近!?「見えない布地」の量産が可能に

■ナノ粒子間の距離を一定に保つことに成功

 夢の“透明マント”の素材としてこのメタマテリアル以上のものは見当たらないのだが、光を特定の値で迂回させるメタマテリアルを設計し、マントの素材にできるくらいに量産するのは至難の業である。人間の視覚に影響する可視光線領域は非常に波長が短いからだ。メタマテリアルが開発されて10年が経とうとしているが、これが未だ実用的な技術になっていない大きな理由である。

 現在、ケンブリッジ大学でこのメタマテリアルは純金のナノ粒子をレーザー光線で数珠状に“縫い”、長い紐を作ることからはじめられる。そうしてできた何本もの数珠状の長い紐を積み上げて“繊維”状の素材に仕上げている。

 その際、数珠状に繋いだナノ物質間の距離が電気的・磁気的特性を左右するのだが、これまではメタマテリアルを構成する多数のナノ粒子の配置を一定の間隔に整えることは極めて困難であったという。そのため、ある程度の大きさの物体を覆えるような“透明マント”の作成は途方も無い難事業だと考えられていたということだ。

 しかし今回、ケンブリッジ大学の研究チームはククルビツリル(cucurbituril、ナノ技術による化合物)と呼ばれる樽型分子をナノ粒子間に挟み込んで「スペーサー」にすることで、すべてのナノ粒子間の距離を一定に保ち、電気的・磁気的特性を安定させることに成功した。これは“透明マント”の「布地」の量産化への道を切り開く画期的な発見であるということだ。

「ナノ粒子間の距離をコントロールする技術はメタマテリアルに大きな可能性と実用性をもたらします」と、論文の執筆者の1人であるベンシスラウ・バレフ博士は「Daily Mail」の記事で語っている。

 果たして夢の“透明マント”の完成はいつ頃になるのか。今からどんなことに使うのか考えてみることも楽しいが、決して不適切な使用法(!?)についての想像力を逞しくすることのないようにしたいものである。 
(文=仲田しんじ)

参考:「Daily Mail」、「NIKONチャンネル」ほか

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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