監獄から出てきた凶悪犯 ― 48年間服役していた男の出所で、司法制度が非難される=英国
■犯罪気質は消えるのか?
その後服役を続けたロバーツは、2001年に監視の緩やかな刑務所に移送されたが、麻薬を持ち込んだことで、再び厳重な監視の刑務所に戻される。また2009年には、仮釈放期間中に働いた農場の女性を脅迫したことが明らかになり、仮釈放を取り消された。
『Natural Born Killers(ナチュラル・ボーン・キラーズ)』の著者ケイト・クレイ氏は、本の執筆のためにロバーツをインタビューしたことがある。その時、ロバーツは刑務所のキッチンでアップルパイを作っており、パイ皮を使って殺された警官を型取り、それをパイの飾りにしていたと言う。また彼は何者かが警官を撃っている場面を正確に描いた絵を彼女に見せたと言う。
またジャーナリストのニック・デビー氏が、ロバーツにインタビューした時には彼はこう語った。
「皆が『後悔しているか?』とオレに聞くけど、死んだ警官の家族には悪いと思っている。オレは、元々誰も殺そうとは思っていなかった。ただあそこで捕まってまた刑務所に15年も入りたくなかっただけさ。俺たちはプロの犯罪者だ。一般人とは違うのさ」
インタビューの間、ロバーツに反省の色は全く見られなかった。そしてその奇妙なプライドのせいなのか、彼はその後の仮釈放の機会を計8回拒否している。
そして今回、仮釈放委員会はロバーツに再び仮釈放を認める決定を下した。これを受け入れた彼は早ければ、数週間中にケンブリッジのリトルヘイ刑務所から出所する。しかしこの決定に対して、実は政府や警察から大きな非難が巻き起こっている。
「この決定は司法制度による警察への裏切りだ」(英国警視庁連合)
「警官殺しの犯人は刑務所に生涯いるべきだ(英国の法律では警官殺しは通常の殺人より重罪で終身刑を下される事が多い)」(英国内務相テレサ・メイ氏)
「この決定には吐き気を催す。これは警官殺人に対する刑事裁判と裁判所法案を変えるものだ」(ロンドン市長ボリス・ジョンソン氏)
しかし英国副首相であり、枢密院議長のニック・クレッグ氏は仮釈放委員会の決定を擁護している。
クレッグ氏は「これは『感情』ではなく、『如何に司法制度が機能するか』で判断するべき事案だ」と言い、また「司法制度を感情によって動かしたければ、それでいい。やがて司法制度は壊滅するだろう」とラジオ局LBCのインタビューに答えている。
ロバーツは釈放されても非常に厳しい規則を課され、それを破ればたちまち刑務所に戻される。年齢からいっても、今後犯罪に手を染める可能性は低いであろう。しかし写真で見るロバーツは78歳とは思えないほど、かくしゃくとしており不敵な面構えである。48年の刑務所暮らしを乗り切った男は今、心の中で一体何を考えているのだろうか。
(文=美加リッター)
参考:「Daily Mail」、「BBC」ほか
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2024.10.02 20:00心霊監獄から出てきた凶悪犯 ― 48年間服役していた男の出所で、司法制度が非難される=英国のページです。犯罪、殺人、イギリス、裁判、美加 リッター、ハリー・ロバーツなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで