撮影:殿村任香
2012年の結成以来、音楽シーンで着実に知名度と存在感を高めてきた「水曜日のカンパネラ(以下、カンパネラ)」。サウンドプロデューサー・Kenmochi Hidefumiの生み出す洗練されたエレクトロサウンドと、一度聴いたら病みつきになる小悪魔的魅力を備えた声のラップ、そして千利休や桃太郎などをテーマとした、リスナーのド肝を抜く歌詞の世界観が人気の秘密だ。
ユニットの主演/歌唱を務めるコムアイは、若干22歳の現役大学生。おしゃれ女子と形容されそうな外見に似合わず、鹿の解体や自然農法に興味を持ち、高校時代にはキューバへと旅するなど、そのパーソナリティはマニアックの一言に尽きる。現在、サブカルのヒロインとして各方面から熱いまなざしを集める彼女は、いったいどのような人生を歩んできたのだろうか? 新作『トライアスロン』にかける思いとともに、コムアイの半生を探る!
■コムアイがコムアイになった理由
――「鹿の解体」をはじめ、過激で風変わりなイメージが強いコムアイさんですが、まずは、その半生を伺いたいと思います。いったい、これまでどういう人生を歩んできたのでしょうか?
コムアイ:中学生の頃から、毎日同じ時間に学校に行くことができない人でした。精神的に死んでいく感じがして遅刻を繰り返していたんです。当時から、父親にも「お前に会社員は無理だから上手くやりなさい」と言われていたんです。
――いわゆる「普通の大人」にはなれない、と。
コムアイ:そう。それで、身の回りの大人だけでなくいろんな職業を知りたいと思って、たくさんの人と出会うようになりました。環境系の活動を行っている団体や、シェアハウスなどに入り浸りながら、「普通」とはちょっと違う人々と話してきたんですよ。
――自然農法を実践する農場で住み込みをした経験もあるそうですね。
コムアイ:茨城県の農場で1カ月暮らしました。コミューンみたいに、ヒッピー的な暮らしをしている人が集まる場所だったんですが、そこで生活しながら、この先何があっても最低限食べていけるなという安心感を覚えたんです。自分のなかで「都会で上手くいかなくても田舎で暮らせばいい」というセーフティネットができたんですね。そもそも水曜日のカンパネラにはメンバーのDir.Fから誘われたんですが、やりたいこともないし、ちょっと面白いかなくらいのノリだったんです。いま音楽活動をしつつ将来に対して不安にならないのは、農場で感じた「最低限食べていける」という安心感が後ろ盾になっています。