【バンコク裏街】日本人が愛したドラッグ・売春の聖地が消える ― 都市開発で失われた景観

【バンコク裏街】日本人が愛したドラッグ・売春の聖地が消える ― 都市開発で失われた景観の画像1

■タイ旅行本でも有名な「台北旅社」が6月に閉鎖

 タイの首都、バンコクの中華街、通称ヤワラー地区にある安宿、台北旅社が、閉鎖されることがわかった。閉鎖の日時は当初は6月15日とされていたが、早ければ5月中にも閉鎖されるという。

 台北旅社の開業は1965年。およそ50年間の歴史に幕を降ろすことになる。台北旅社は往年の日本人旅行者に愛されたことで知られる。

【バンコク裏街】日本人が愛したドラッグ・売春の聖地が消える ― 都市開発で失われた景観の画像2

 バンコクの安宿街といえば、カオサンロードが有名であるが、同地が活性化するのは1980年代末ごろからである。それ以前は、ヤワラー地区に多くの日本人が集っていた。

 その理由は定かではないが、タイ各地への長距離列車が発着するフワランポーン駅(タイ国有鉄道の主要幹線4路線の起点として位置づけられている)へのアクセスのよさ、元祖歓楽街といえるパッポンやタニヤへの近さ、漢字があふれているのでタイ語よりは日本人にはなじみがある、といった理由が挙げられるだろう。しかし、本音を記せば“クスリ”と“オンナ”に尽きるだろう。

 現在のヤワラー地区にドラッグの匂いはあまりしないが、売春は健在だ。台北旅社周辺には立ちんぼの娼婦たちがたむろする。相場は500バーツ(約1,800円)からとバンコクの売春相場からしても、最安値をキープしている。台北旅社も一部のフロアは、時間貸しのラブホテルとなっている。

 台北旅社の宿泊料金はシングルの場合1泊450バーツ(約1,600円)。部屋には広いダブルベッドと、電気式のホットシャワー、カラーテレビ、エアコンがある。そして、毎日のシーツ交換と、お茶入れに使うお湯のサービスがある。

 ホテルには、ほぼ住み込み状態の従業員や娼婦もおり、ひとつの貧民窟のようになっている。さながら中上健次の小説で描かれる「路地」の世界である。

■都市開発で味のあるヤワラー地区の景観が失われる

【バンコク裏街】日本人が愛したドラッグ・売春の聖地が消える ― 都市開発で失われた景観の画像3

 ヤワラー地区には台北旅社以外にも、日本人旅行者が根城とするホテルが存在した。台北旅社と通りを隔てた向かい側に位置するジュライホテルは、多くの訳あり日本人が長期滞在することで知られ、その様子は、小林紀晴の『アジアン・ジャパニーズ』(情報センター出版局)や、クーロン黒沢の『バンコク電脳地獄マーケット』(徳間書店)をはじめとする一連の著作に詳しい。さらに、楽宮旅社なる安宿も存在し、谷恒生が『バンコク楽宮ホテル』(徳間書店)を著している。

 この現状についてタイに詳しい旅行ライターに話を聞いた。

関連記事

    人気連載

    深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

    深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

    現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

    2024.10.16 20:00心霊
    “包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

    “包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

    現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

    2024.10.02 20:00心霊
    深夜のパチンコ屋にうつむきながら入っていく謎の男達と不思議な警察官【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

    深夜のパチンコ屋にうつむきながら入っていく謎の男達と不思議な警察官【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

    現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

    2024.09.18 20:00心霊
    奇妙な風習…“引っ張り合う”魂が集う墓地に佇む老婆【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

    奇妙な風習…“引っ張り合う”魂が集う墓地に佇む老婆【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

    現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

    2024.08.07 20:00心霊

    【バンコク裏街】日本人が愛したドラッグ・売春の聖地が消える ― 都市開発で失われた景観のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで