将来、人間は眠らなくても生きていけるように?注目されるスマートドラッグ、脳波コントロール、多相睡眠
●機器
睡眠の質を高めたり、睡眠と同じような疲労回復効果をもたらす機器はすでにいろいろと出回っている。カナダのIT技術者集団「Hack Canada」のサイトでは、LEDライトとゴーグルなどの簡単なパーツを使って脳波をコントロールできる機器「Brain-Wave Machine」の作り方を公開しており、世界各国でこれをもとにした機器が作られているようだ。
またニューヨークの「Fisher Wallace Laboratories」から発売されているヘッドセット型の機器「Fisher Wallace Stimulator」は、こめかみへの弱電流刺激によって脳内のセロトニンとコルチゾールの分泌を刺激し、レム睡眠に導くということだ。FDA(アメリカ食品医薬品局)の基準をクリアした医療機器で、一部の病院では不眠症の治療などに使われているという。
一方、 DARPA(国防高等研究計画局)と「Advanced Brain Monitoring」社が共同で開発した入眠導入機器「Somneo Sleep Trainer」は実際に米軍の兵士たちに使われている。入眠の誘導に優れているだけでなく、目覚まし機能もついており快適な目覚めをもたらしてくれるという。また先頃には、ヘッドホン型の“睡眠コントロール機器”である「Kokoon」がクラウドファンディング「kickstarter」から登場して注目を集めている。現状でもこれだけの機器があり、今後技術革新が進めばより優れた脳波コントロール機器や睡眠導入機器が登場してくるだろう。
●薬物
薬物を用いて睡眠時間を削ることは、当然ながら覚醒剤などの違法薬物を連想させる危険なイメージがある。覚醒剤の代表格で中枢神経を刺激して覚醒させる作用があるアンフェタミンやメタンフェタミンは、第二次世界大戦中に各国兵士の士気向上や疲労回復の目的で実際に用いられていたことも事実だ。
いくらトランスヒューマニストとはいえ、これらの禁止薬物を考慮に入れることはできず、仮に違法を覚悟で用いたとしてもその後の後遺症のリスクは大きいため継続的な使用はできないだろう。そこで昨今注目されているのがヌートロピック(Nootropics)と言われる向知性薬である。
ヌートロピックは日本では「スマートドラッグ」と呼ばれることもあり、文字通り頭を良くするための認知機能向上薬の総称だ。合法のものが多いが、薬の種別によっては規制されている場合もある(もちろん国によっても異なる)。ヌートロピックの大半は日本では生産されていないため、国内ユーザーはインターネットを介した個人輸入などで入手していると考えられている。
ヌートロピックの中で、トランスヒューマニストに注目されているのはモダフィニル(Modafinil)とアドラフィニル(Adrafinil)であるということだ。この2つはほぼ同様の効果があり、服用することで眠気が払拭され意識がはっきりとしてくる「覚醒促進剤」である。しかも依存症状や禁断症状がないといわれている。
モダフィニルは日本では「モディオダール」という商品名で流通しているが、第一種向精神薬に指定されており、ナルコレプシー患者および閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者に対してのみ処方が認められているため、自由に入手することはできない。またアメリカでもモダフィニルの使用をめぐってはまだ議論が続いているようだ。大麻規制が見直される動きがある一方で危険ドラッグに対する世界的な規制強化もあり、このヌートロピックも先行きは不透明だが、それでも認知能力の向上をもたらす薬物が従来の“覚醒剤”とは別の流れから登場していることは興味深いだろう。
●知恵(ライフハック)
ハイテクな睡眠導入ガジェットや、ややグレーゾーン(!?)の薬物などあまり穏やかではなさそうな話題が続いたが、最後に来るのはもっとも平凡でシンプルな眠りの“知恵”だ。それは「多相睡眠」にあるという。
『「週4時間」だけ働く。』の著者でもあるティモシー・フェリス氏は、1日に短い睡眠を何度もとる多相睡眠(Polyphasic sleep)を自ら実践し推奨しているということだが、この多相睡眠はトランスヒューマニストにも注目されているという。質の高い短い睡眠を何度もとることで、睡眠に費やす総時間を減らすことができるからだ。
最も総睡眠時間の少ない多相睡眠モデルは「ウーベルマン(スーパーマン)」と呼ばれ、4時間ごとに20分の睡眠を1日6回行なうことで、総睡眠時間を2時間に抑えることができるという。ナポレオンを凌駕するショートスリーパーということになる。そしてこれは前出の睡眠導入ガジェットなどを使うことにより、ナポレオンの時代よりは確実に容易になっていそうだ。睡眠時間の短縮を目論むいくつかのアプローチが提示されたわけだが、もし近い将来、健康に支障なく短時間睡眠が可能になったとして、それで浮いた時間をどんなふうに使うか考えてみるのも一興かもしれない。
(文=仲田しんじ)
参考:「Raw Story」ほか
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