「時間を見ることができる人」が2.2%いる? 驚異の特殊感覚が判明する!
心臓を2個持ち、命を落としても再生できる能力を有し、時間と空間を自由に旅するという最強宇宙人種族が、テレビドラマシリーズ『ドクター・フー』に登場するタイムロードだ。もちろんSF物語上の架空の種族ではあるが、最近の研究では驚きべきことに我々の中にタイムロードに近い人々がいることがわかっている。いったいどんな人々なのか?
■“カレンダー表示機能”を持つ「時間=空間共感覚」
我々の中のごく一部に共感覚(synesthesia)を持つ人々がいる。共感覚とは、五感を通じてもたらされた刺激に対して、別の知覚が結びついている現象で、文字を見たときや音を聴いたときにそれに対応した“色”を感じるという例が有名だ。例えば数字の0から9がそれぞれ異なる色で見える(あるいは色を連想させる)というケースが多く報告されている。また色や音のほかにも味を感じる珍しい例も報告されていて、以前トカナでも紹介している。
だが、さらに珍しい共感覚があることが最近の研究でわかってきている。なんと“時間を見る”ことができるという共感覚だ。この人々は、まさにタイムロードのように時間の扱いに長けた“種族”ということになるのかもしれない。
ノースウェスタン大学やシカゴ大学で研究を続けている心理学者で脳科学者のディビット・ブラング氏が2010年に学術誌「Consciousness and Cognition」で発表した研究によれば、時間を空間で認識しているという「時間=空間共感覚(time-space synesthesia)」の症例を紹介している。研究によれば人口の2.2%がこの「時間=空間共感覚」を有しているということだ。
また科学系情報サイト「New Scientist」の記事によれば、時間=空間共感覚を有する人は、今年1年がドーナツのような輪っか状になった構造物として見えているのだという。この輪は大きく月で区切られていて、現在の月が胸の辺りに見えているということだ。現在の月の部分を詳しく見ると、さらに週や日、時間と細かく区切られているという。カレンダーがいつも目の前にあるということで、一種の“カレンダー表示機能”と呼べそうだ。これは183人の時間=空間共感覚を有する学生に「時間の見え方」を説明してもらうことで浮き彫りになってきたのだ。
「このカレンダーは頭の中に描いていたものが、実際の視界の中に投影されたものなのです」と語るブラング氏。まるで浮き輪のように胸の周囲に投影されているこのカレンダーは時の経過に合わせて少しずつ回転するという。最も目の前の表示が常に現在を示しているのだ。まさに腕時計いらずということにもなりそうだ。またこの“カレンダー表示機能”は、現在マイクロソフトで開発されているゴーグル型のAR(拡張現実)機器「ホロレンズ」でまさに実現しそうな技術である点も興味深い。
■時間=空間共感覚の驚異的な記憶力が明らかに
研究では、時間=空間共感覚を有する者の優れた記憶力もまた証明されることになった。
実験では共感覚者と、そうでない人々にそれぞれの人生の出来事の日時を思い出してもらったのだが、共感覚者は平均123件の出来事を年月日と共に思い出すことができたという。一方、共感覚を持たない者は平均39件しか思い出せなかった。
「7歳の夏休みの旅行で行った場所は誰でも思い出せるでしょうが、共感覚を持った人々はおそらくその時泊まった旅館の名前や、宿の担当者の名前、そこにいた飼い犬の種類まで思い出すことができるのです」(ディビット・ブラング氏)
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