「セクション4:宇宙旅行と人間の未来」
■宇宙がリアルになったとき、米ソ宇宙開発競争と21世紀の新宇宙時代の到来
世界で初めて有人宇宙飛行に成功したのは、ソ連(ロシア)だった。ここでは宇宙開発の父といわれるロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキーのドローイング、米ソの宇宙飛行士の記録写真などを通じて、宇宙開発の歴史を見渡していく。
そして、現在は、火星有人飛行も計画されている。火星の氷を利用して建設する《マーズ・アイス・ハウス》など、サイエンス好きが喜ぶのはこのセクションだろう。そして、最後は、日本のチームラボによる映像と音楽とのsインララクティブな体感作品でまとめている。
ざっと、展示内容をみてきたが、展示期間中は、さらに「宇宙から地球を観る」と題された映像企画展が併設され、スプツニ子!らを始めとする映像作品を観ることができる。展示内容をさらにディープに楽しむための音声ガイドは、「宙(ちゅう)ガール」こと、篠原ともえが担当。彼女は、2014年に「小惑星Shinohara」(小惑星番号14555)が国際天文学連合で学術名として正式登録ほどの宇宙好き、『宇宙と芸術展』の盛り上げ役も務めている。
森美術館が全力で臨む『宇宙と芸術展』、ローラン・グラッソ、うつろ舟、コンスタンチン・ツィオルコフスキーと、Tocana読者のハートをがっちり掴む貴重な作品を取り揃えているのが嬉しい。今回の展示でなければ、みれないレアアイテムも多く、ちょっとした予習をするか、数回訪れる気構えで臨むと、あなた自身の“宇宙観”に激変が起こるかもしれない内容だろう。
展示全体を総括するなら、あらためて、ルネサンス期から近代へ、天動説から地動説へと西洋の宇宙観が激変することから、世界も大きな変化を迎えたことを思い起こす。そして、モダンからポストモダンへと激変の時代の渦中にある今、「人間とは何か」という人間観そのものが大きく変わりつつある。そのことは、人間と宇宙とのかかわり方にも大きく影響している。宇宙はいまや夢の世界ではなく、殺伐とした過酷な世界として、待ち構えている。だからこそ、人類ではなく、機械(ロボット)が最果ての宇宙の旅に望み、最終的に地球外生命体と出会うのは、機械であるかもしれない。この展示は、来たるべき未来を予見すると同時に、僕らに新たな時代の到来を気づかせる展覧会となっている。そして、この展覧会の真価が問われるのは、新たな宇宙開発のページが開かれたとき、たとえば、火星有人飛行が達成されたときかもしれない。
(ケロッピー前田)
■『宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ』
会期=2016年7月30日(土)~2017年1月9日(月・祝)
開館時間=10:00~22:00|火10:00~17:00
(会期中無休/入館は閉館の30分前まで)
入館料=一般1,600円、学生( 高校・大学生)1,100円、子供(4歳~中学生)600円(消費税込/展望台 東京シティビュー、屋上スカイデッキは別途料金)
会場=森美術館 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
・http://www.mori.art.museum/contents/universe_art/index.html
■ケロッピー前田
1965年東京生まれ、千葉大学工学部卒、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)が話題に。新刊『クレイジートリップ』(三才ブックス)発売中!
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