「シュレーディンガーの猫」、箱を開けなければ不老不死だった! 「量子ゼノ効果」の謎すぎる実験結果が証明!

■人工原子に対する擬似測定を行った実験

 量子ゼノ効果と同じく重ね合わせの状態が損なわれることで、逆に状態の変化を加速する現象も起こり得る。これを反量子ゼノ効果と呼ぶ。

 そもそも量子ゼノ効果は、1958年にイギリス人数学者のアラン・チューリング博士によって提唱されたものだが、その詳細についての理解は1989年に研究室で実際に観測されるまでよくわからないものであった。具体的には、放射性原子を頻繁に観測するとなぜか放射線を出さなくなり、その結果として放射性崩壊の時期がどんどん伸びていくことが確かめられたのだ。つまり頻繁に観測することで放射性原子が“長生き”するのである(量子ゼノ効果)。そしてその10年後には、同じように頻繁に放射性原子核を観察することで逆に崩壊を早めさせて“短命”にするケースもあることが確認された(反量子ゼノ効果)。

 そしてこうした量子ゼノ効果や反量子ゼノ効果を人為的に発生させることができれば、いろんな可能性が開けてくることになる。

 ワシントン大学セントルイス校の研究チームが先ごろ「Physical Review Letters」に発表した研究において、量子コンピュータの基幹技術として注目されている人工原子(キュービット、量子ドット)を用いた実験を行っている。実験ではさまざまな状態にある人工原子を100万分の1秒単位で観測できるハイテク機器で観察した。機器による観測であり、人間のような確固とした観察主体ではないため、研究チームはこれを擬似測定(quasi-measurements)と呼んでいる。

「シュレーディンガーの猫」、箱を開けなければ不老不死だった! 「量子ゼノ効果」の謎すぎる実験結果が証明!の画像2画像は「Wikipedia」より

 実験の結果、この擬似測定でも人工原子に量子ゼノ効果と反量子ゼノ効果を引き起こすことができることがわかったのだ。この技術で量子ゼノ効果を引き起こした場合、この原子は観測を止めない限りずっと一定のままで年を取らないことになる。つまりこの技術でシュレーディンガーの猫を観察した場合、原子レベルでは永遠に生き続けていくことになるのだ。しかもこの場合、観察においていちいち箱を開け閉めしなくとも、箱を揺するだけでいいという。

 もちろん有機体としての生物はどうしたって死を免れないが、原子レベルで加齢をストップできれば、その寿命は大幅に伸びるのかもしれない!?

参考:「Science Alert」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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