■トラディッショナルとアバンギャルドが交錯する祝祭空間
今年35回を迎える土師祭の目玉は千貫神輿だ。この神輿は約3.5トン。関東最大級と言われている。江戸時代の寛永年間から続いてきたものの、担ぎ手不足により大正二年で中断したのだが、1983年に地元有志の手で70年ぶりに復活した、いわばこの地域の伝統の象徴である。
そして、もう1つの目玉が『らき☆すた』神輿。
このD.I.Y.感満点の神輿は2009年、『らき☆すた』をきっかけに鷲宮を訪れるようになったファンと地元住民との交流のなかから新たに生まれた。その経緯はフジテレビのドキュメンタリー番組「Nonfix」の『オタクと町が萌えた夏』(2009年放映。感涙必至!!)に詳しい。
江戸時代の千貫神輿と2009年にお目見えした『らき☆すた』神輿が同じ舞台で共演する。加えて、アニソンDJやアイドルによるアゲアゲなパレードにライブやトークといった数々のイベントが開催される。
伝統と革新。土着の「神」と渡来の「ネ申」の、同じ時空での交わりあう。それこそが現代の土師祭なのユーニークさなのだ。
■商店街がコスプレイヤーたちの解放区に
会場で目を引くのは町内を闊歩するコスプレイヤーたちの姿だ。
その様子は正直な話、とても異様。初めて訪れる人は、思い思いのコスチュームを装い祭を楽しむ若者たち(だけじゃなくてミドルエイジも多い)が周囲に放つ強烈な違和感に打ちのめされるだろう。アニメやマンガ、特撮のキャラたちが神社の境内や商店街でコスプレ撮影をしあったり、露店を冷やかしながらりんご飴を頬張ったりかき氷をかき込んだりしているのだから。
それも、普段着の家族連れや浴衣姿のカップル、神輿を担ぎにやってきた強面の若衆たちに混じって。
さながらストリートに突如現れたアニオタたちの「解放区」。そして、あなたはきっと、そこにピースな空気しか流れていいないことに気づくはずだ。