撮影:ケロッピー前田
東京・世田谷文学館で『澁澤龍彦 ドラコニアの地平』展(2017年12月17日まで)が開催中である。
フランス文学者・澁澤龍彦は、1960年代から日本アングラ文化を支えるカリスマとして君臨し、翻訳、評論、エッセー、小説と多岐にわたる執筆活動を展開してきた。当時の日本ではまったく未知であったヨーロッパの異端文学・芸術を精力的に紹介し、エロティシズム、魔術、迷宮、怪物、両性具有など、澁澤の著作を通じて、広く知られるようになった言葉も多く、戦後日本のアングラ文化に絶大な影響力を及ぼし続けてきた。
今年2017年は、1987年に世を去った澁澤龍彦にとっては没後30年にあたり、いくつもの回顧展が開催されている。そんな中でも『澁澤龍彦 ドラコニアの地平』展は、文学を専門に扱う文学館での開催ということもあって、著述家としての澁澤の魅力を余すところなく紹介しているという点で、往年の澁澤ファンから、これから著作を読んでみようというビギナーまで楽しめる内容となっている。創作の秘密や制作の現場、プライベートな生活まで今回の展示で初公開となったものもあり、草稿や自筆メモ、愛蔵の美術コレクション、和洋の蔵書など、貴重な資料が300点以上展示されている。
撮影:ケロッピー前田
展示会場に入って、まず誰もが惹きつけられるのが、澁澤の自宅を立体的に再現したインスタレーションだろう。ぎっしりと蔵書が詰まった本棚が見える奥の書斎は写真だが、手前の居間の部分には、実際に澁澤邸の壁に飾られていた絵画コレクション、人間の頭蓋骨のレプリカや綺麗な貝殻が収められた陳列棚やソファなどが置かれている。実際に澁澤邸を訪れているような雰囲気で、彼のコレクションが堪能できるのは嬉しい限りだ。