死体を見て、自分の描いた絵が動き、音を出す…『デヴィッド・リンチ:アートライフ』で描かれた巨匠の頭の中の悪夢
また、美大に進んだリンチが、もう一つの大きな殻を破るきっかけとなるのが、リンチが死体を見に行ったり、自分の描いた絵が動き、音を出す妄想を見たりしたことである。
特に絵画が動く幻視は、リンチが絵画作品では満足できないイマジネーションを持っていた証であり、彼の頭の中ではすでに映像作品が動き始めていた。その創造欲求がのちに『イレイザーヘッド』を生む。
改めて、作品全体を見るなら、リンチが仕上げていく数々の絵画作品が、彼の子供時代や青年期の記憶や経験、あるいはその当時の彼の妄想と深く繋がっていることがよくわかる。
なぜ、映画監督として、これほどの地位を築いてもなお、リンチはアトリエで絵の具にまみれて、絵画制作を続けるのか?
それは、芸術家として生きることを決心した彼が、高校時代から自分に課してきた習慣であり、それがタイトルにあるアートライフなのである。観たあとに、再びリンチ自身の作品を観たくなる、素晴らしいドキュメンタリーである。
★【上映情報】
『デヴィッド・リンチ:アートライフ』
2018年1月27日(土)より、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷、立川シネマシティ
ほか全国順次公開
監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルム
出演:デヴィッド・リンチ 音楽:ジョナサン・ベンタ 配給・宣伝:アップリンク
(2016年/アメリカ・デンマーク/88分/英語/DCP/1.85:1/原題:David Lynch: The Art
Life)
【公式サイト】
http://www.uplink.co.jp/artlife/
【デヴィッド・リンチ:プロフィール】
1946年アメリカ・モンタナ州生まれ。映画監督、脚本家、プロデューサー、画家。米コーコラン・スクール・オブ・アーツ、ペンシルベニア美術アカデミー、アメリカン・フィルム・インスティテュートで絵画から映像制作を学び、映画『イレイザーヘッド』(1976年)で監督デビュー。その不気味で不可解な自主映画は全米で話題となり、独立系映画館の深夜上映にもかかわらずロングランヒットする。当時、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エル・トポ』(1970年)や、ジョン・ウォーターズ監督の『ピンク・フラミンゴ』(1972年)、ジム・シャーマン監督の『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)と並び、ポップカルチャーに大きな影響を与えた作品として「ミッドナイト・カルト」と呼ばれ、一部の観客たちに熱狂的に支持された。次作『エレファント・マン』(1980年)はアカデミー作品賞にノミネート、『ブルーベルベット』(1986年)ではアカデミー監督賞にノミネートされる。『ワイルド・アット・ハート』(1990年)では、カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞。『マルホランド・ドライブ』(2001年)でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞する。米国や日本でも大ヒットしたTVドラマ『ツイン・ピークス』(1990~1991年)の続編『ツイン・ピークス TheReturn』(2017年~)でも監督を務め、大きな話題を呼んでいる。映画のみならず現代アートや音楽の分野でも活躍し、2010年には、美術界において権威のある「Goslar Kaiserring award for 2010」を受賞した。
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