酒井 辞めた後は、独立して同じような仕事をしました。そのときフリーカメラマンを雇うと1日3~5万円かかるんですね。この人を10日間雇わなかったら、いいカメラを買えると考えたのが、カメラマンになるキッカケでした。
――そこでやっと扇情カメラマンにつながるんですね。
酒井 最初に一番いいカメラを買って、自分で撮ってみました。「いける」と思ったんですが、お店からダメ出しがきましたね。良かったのは風俗街をクライアントにしていたことです。
「こんなの使えないよ」と怒ってくれます。さらにお店のスタッフが、「表情はこうだ」「ポーズはこっちだろ」と意見を言ってくれるんです。その通りにやっているとだんだん上達してきました。ちゃんとカメラマンをやろうと決意したのが40歳のときでした。
――40歳デビューでここまでくるとはスゴイですね。
酒井 今や高校生などを前に話をすることもあります。よく話すことがあるんですが、「他人の言葉はニュートリノと同じだよ。毎日あなたに降り掛かっている。キャッチできるのはスーパーカミオカンデでも1日10個くらいだ。どんな言葉でもあなたが受け入れるつもりがないと入らないよ。でも投げかけてくれる人はいるから、受け入れる準備もしておいた方がいいよ」というような話です。
僕も、これまでいろんなことを言われても、全部スルーしてきたんです。本当に困ったときに、他人の言葉を受け入れようとしたのが、40歳を超えてからかもしれない。もっと早く気づいてほしいと若いコたちにメッセージを送りたいですね。