今夜19時30分から放送される「ブラタモリ」(NHK総合系)の舞台は世界!絶景スポットの成り立ちをテーマに、グランドキャニオンはパワースポットとして人気の宮崎県青島を取り巻く奇岩”鬼の洗濯板”の超巨大板?ヒマラヤの起源はまさかの海底にあった…!といった謎を最新技術を駆使して解き明かす。
自然が生んだ絶景は素晴らしいことこの上ないが、この世には人間が作った絶景というものもまた存在する。建物としての利用価値を消失した途端、儚さをまとった美しさが付加される”廃墟”などがまさにその代表だろう。過去にTOCANAでは、世界的な廃墟写真家ボブ・ティッセン氏を紹介している。廃墟特有の魅力をまざまざと見せつける同氏の写真をいま一度再掲する。
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※ こちらの記事は2020年2月2日の記事を再掲しています。
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オランダ人のボブ・ティッセン氏(34)は、10年以上かけて世界70か国を巡り、各地の廃墟を撮影してきた世界的な廃墟写真家だ。このたび、ティッセン氏のご厚意で秘蔵のコレクションから選りすぐりの廃墟写真をお借りすることができた。
●ボブ・ティッセン氏のYouTubeチャンネル→「Exploring the Unbeaten Path」
●ボブ・ティッセン氏のInstagram→「exploringtheunbeatenpath」
廃墟を撮影する際にティッセン氏でも恐怖を感じることがあるそうだ。特に震災後の福島を訪れた時には、米ゾンビアポカリプステレビシリーズ『ウォーキングデッド』の世界に迷い込んだように感じたという。
アメリカにある精神病院の廃墟もティッセン氏を心底恐がらせた。手術器具が放置された院内はたしかに薄気味悪い。
「精神病院の廃墟はだいたい気持ち悪い。車椅子と手術室だらけの刑務所みたいだ」(ティッセン氏)
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エストニアにあるソ連時代の収容所、アメリカにある結核患者のサナトリウム、大量の人間の骨とサソリに埋め尽くされたイタリアの廃教会、台湾にあるらい病患者のサナトリウムなどもティッセン氏の恐怖廃墟リストに名を連ねている。
また、ティッセン氏自身も気に入っているという「とっておき」の作品も送って頂いた。1つはブルガリアの「ブズルジャ・モニュメント」だ。ソ連時代に作られたバルカン山脈の峰に立つホールである。かなり老朽化しており、普通は外部からの見学しかできないが、ティッセン氏はその内部にある巨大なモザイク画を神秘的に写し出した。
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なかには廃墟とは思えない写真もある。廃墟となったフランスの城はまるで18世紀から時間が止まってしまったかのように、調度品が整っている。
アメリカの廃シアター、フランスの打ち捨てられた戦艦など、歴史の重みを感じさせる写真も多いが、そのなかに何だかよくわからない趣味の日本の廃ラブホテルも含まれているから笑ってしまう。SMと中世趣味のキッチュな融合がなんとも味わい深い。
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建物として利用されなくなった廃墟はまったく実用的価値のないものだ。だからこそ、そこには美的価値が生まれ、訪れる者との間に不思議な距離を生み出す。だが、その不思議な距離は廃墟が“家”として見られた瞬間に消失し、廃墟は生活のための道具になってしまう。
ティッセン氏の写真が我々に見せてくれているのは、廃墟だけが持つそんな儚い距離に他ならないだろう。
●ボブ・ティッセン氏のYouTubeチャンネル→「Exploring the Unbeaten Path」
●ボブ・ティッセン氏のInstagram→「exploringtheunbeatenpath」
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