都市伝説「死体洗いのバイト」を広めたのは大江健三郎? 短編『死者の奢り』がネタか

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 3日未明、ノーベル文学賞を受賞した作家の大江健三郎氏が死去した。88歳だった。死因は老衰であり、後日お別れの会が開かれる予定だという。

 大江健三郎氏の著作は社会的・政治的な問題を取り扱うものや、障害をもつ長男に寄り添うものなど重いテーマを追求する小説が多い。そんな大江氏の著作でとある有名な都市伝説と密接に関係しているとされる作品がある。

 皆さんは「医学部の高額バイト」の話を耳にしたことはあるだろうか。医学生は皆解剖学の実習を行うが、その実習に使う献体は大学病院の中にあるホルマリンのプールに沈められる形で保管されている。それでも献体の腐敗が進行していくとプールから浮かび上がってくるため、長い棒で突いて再びプールに沈める。また、実習の前には献体を清める作業も行うという。このバイトの時給は1~2万円と高額で、内容が内容だけに主に医学部の学生を中心に募集していることが多い。しかし作業内容、ホルマリンや死体からの強烈な臭いに絶えきれず、長続きする人はあまりいないのだとか……といった内容の都市伝説だ。

「死体洗いのバイト」とも呼ばれるこの都市伝説、ネタばらしをしてしまうと当然ながら存在しない。解剖用遺体の取り扱いには厳しい制限が設けられているため、何も知らないバイトに扱わせることは有り得ないという。また、ホルマリンについては揮発性が極めて高く、中毒の可能性があるためプールに沈めるといった方法はなされず、解剖実習でもフェノールを振りかけるのが一般的とのこと(※ただし、かなり昔はプールに沈める形で遺体を保管していたという話もある)。

 この話は都市伝説の中でもポピュラーなものの一つとして紹介されることが多く、ネットで調べると真相もセットで出てくるため現在では信じている人も少ないといえるだろう。しかし、一昔前はこの都市伝説を信じて実際に大学病院に問い合わせる人もいたり、実際に問い合わせの電話を受けたことがあるという人も存在していたようだ。

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 この「死体洗いのバイト」の都市伝説を大きく広めたのが、大江健三郎氏の短編小説『死者の奢り』ではないかとされている。都市伝説の通り、主人公が高額な時給につられて解剖用死体を処理するアルバイトを始めるという内容で、作中では遺体の保管方法や登場人物の心情が巧みに描かれていた。なお、この著作が世に出た1957年には、すでに「死体洗いのバイト」の噂は存在したそうなので、大江氏の著作にあった真に迫ったショッキングな描写が噂の信憑性を高め、さらに影響力を増して都市伝説へと変えていったのではないだろうか。

参考:「Wikipedia」「解剖学教室の高額バイト」ほか

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文=勝木孝幸(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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