1400人虐殺、首切り「リズム0」 群集心理による残酷すぎる事件4選!
昨年10月29日、韓国・ソウルの梨泰院(イテウォン)で158人が死亡する転倒事故が発生したのは記憶に新しい。当時はハロウィンの前々日ということもあり大勢の人が詰め掛けていたが、幅3.2メートル、長さ40メートルの坂道で身動きが取れないほどの混雑が発生、そのまま群集雪崩(ドミノ倒し)が発生した。関西大学の川口寿裕教授によると「人は危険と気付かずに次々に雑踏に入ってしまう」とする群集心理が働くという。
人は集団になると思いもよらない行動を起こすことがある。以下、群集心理による歴史的な事件を4つ紹介した過去記事を再掲する。
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※ こちらの記事は2018年3月12日の記事を再掲しています。
今月10日、神宮球場で行われた日本リトルシニア中学硬式野球協会関東連盟の開会式で、タレントの稲村亜美さんが始球式直後、大勢の中学生に取り囲まれ、もみくちゃにされるというハプニングが起きた。この様子を収めた動画がYouTubeなどにアップされ、集団暴行や痴漢であるとの批判が殺到している。
幸い稲村さんに怪我はなく、自身のTwitterやInstagramに「みなさんのパワーが伝わってきてわたし自身は貴重な経験をさせてもらえました」とコメントを発表する神対応を見せた。しかし、一方では群衆の中で転んだり押されたりして怪我をした生徒もいるとのことで、一歩間違えれば大惨事になりかねない危険な事態であったのは間違いない。
また、現場にいた生徒の一部が稲村さんに触った、抱きついたといったコメントを悪びれもなく投稿していることも批判の的となっている。今回の一件に限らず、人間は集団になると野蛮で暴力的な行動に走ってしまいやすい。かつて社会心理学者ル・ボンは群集心理の特徴を「モラルの低下」「暗示にかかりやすくなる」「思考力の低下」「衝動的になる」などとまとめている。今回は群集心理が引き起こした恐ろしい事例をいくつかご紹介しよう。
マウンテンメドウの大虐殺
1857年9月。米ユタ州南部で、カリフォルニアへと向かう移民の一団がモルモン教徒と先住民のパイユート族に襲撃され、幼い子供を除く120人が殺害されて財産を奪われるという事件が起きた。モルモン教徒たちは移民団が連邦政府から送られてきた「敵」であると指導者らに扇動され、先住民を巻き込んで襲撃をかけたのだ。そして5日間の攻防の後、言葉巧みに武装解除させた移民団一行をだまし討ちにし、一方的に虐殺したのである。
当時のモルモン教指導者ブリガム・ヤングは、事件は教団の命令ではなく、信徒の一部が勝手にやったことだと主張。ジョン・D・リーという信者をスケープゴートとして差し出し、全ての責任を押し付けた。
九月虐殺
革命の嵐吹き荒れる1792年9月、フランス・パリの監獄には多数の反革命主義の政治犯が収監されていた。パリ侵攻が噂される中、反革命分子は義勇兵の出兵後に蜂起し、脱獄して残った女子供を襲うという噂が立っていた。革命の指導者ダントンは「敵に打ち勝つためには、大胆さ、いっそうの大胆さ、常に大胆さが必要なのだ」と演説、囚人への人民裁判を始めた。
パリ各地の監獄で市民による裁判の真似事が行われ、反革命分子とされた囚人たちは次々に処刑された。この事件の最も有名な犠牲者は王妃マリー・アントワネットの友人・ランバル夫人であろう。彼女はドレスを剥ぎ取られ、激しい暴行の末に死亡し、その死体もバラバラにされた。その首は槍の先に突き刺され、タンプル塔に幽閉中だった王妃にも見せつけられた。この事件で推定1100~1400人もの囚人が殺され、パリの監獄はすっかり空になったという。
セイラム魔女裁判
1692年、米マサチューセッツ州セイラム村(現在のダンバース)で、200人近い村人が魔女として告発され、19人が処刑、1人が拷問死、5人が獄死する凄惨な事件が起きた。
きっかけは降霊会に参加していたアビゲイル・ウィリアムズら複数の少女たちの「悪魔憑き」だった。少女たちは使用人ティテュバを始め、村人たちを次々に自分たちを呪った「魔女」だと告発した。敬虔なプロテスタントの村は大混乱に陥り、少女たちのあやふやな証言と拷問による告白を証拠として、次から次に有罪が宣告され、絞首刑が行われた。
異様な事態はやがて州知事の耳にまで届き、ようやく裁判の停止が命令された。裁判に関わった牧師ジョン・ヘイルは「我々は暗雲の中に道を見失った」と記しているという。
リズム0
ユーゴスラビア出身のアーティスト、マリーナ・アブラモヴィッチは1974年、「Rhythm 0」と題した6時間のパフォーマンスを行った。その内容は「テーブルの上にある72個の物体を、望むままに私に使うことができる」というもので、責任は全て彼女自身が背負うとした。
ギャラリーの中心に静かに立つアブラモヴィッチ。その前に置かれたテーブルには羽、バラの花、靴、ワイン、パン、ナイフ、ハサミ、カミソリの刃、弾をこめた銃など、彼女に対して使える物体が並んでいた。
パフォーマンス開始直後、彼女に近づく者はいなかった。だが徐々に、水を飲ませたりバラを渡したりする者たちが現れた。ギャラリーの雰囲気は落ち着いていて、穏やかだった。
だが、やがて彼女の服をハサミで切る男性が現れた。これをきっかけに参加者たちの行動は次第にエスカレートしていった。テーブルに鎖で縛りつけ、股の間にナイフを付きたてた。だが、彼女は抵抗せず、ひたすら作品に献身した。だが、服はずたずたにされ、カミソリで皮膚を切って血を飲む者まで現れ、さらには銃を突きつけられた。さすがに止めに入る参加者も現れて喧嘩となった。
パフォーマンス終了後、半裸で血だらけになり涙ぐむアブラモヴィッチを、誰も正視できなかったという。後に彼女は「観衆は私を殺すことができた」と語っている。今もこの時に付けられた傷跡が残っているそうだ。
残念ながら、人間は集団になると残酷な存在になりうる生物だ。その心理の恐ろしさは現代のインターネット上でも日々垣間見ることができる。2014年のMITなどによる研究によれば、人間の脳の倫理と関係する領域は集団になると活動が鈍るそうだ。
誰しもが群衆の中で理性を失い、暴力的な行動に走る可能性を秘めている。群衆の影響を逃れる術の一つは、自己の道徳観念を積極的に省みることだという。後になって「何であんなことをしてしまったのだろう」と後悔したくないなら、群集心理の恐ろしさを心に留めておくべきだろう。
参考:「Listverse」ほか
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