身長2.6m~3mの巨人部族!?先住民の伝承に残る「ラブロックの巨人」の真実に迫る

 人類の進化の過程において巨人種族は存在したのだろうか。存在していたとすれば、いつどこで、なぜ絶滅したのか。一説では巨人族の“終焉の地”が米ネバダ州にあるという――。

■発見された洞窟に巨人の骸骨

 20世紀初頭あたりまでは鳥やコウモリの排泄物が堆積して固まってできるグアノ(guano)は貴重な肥料源であり、火薬の原料でもあった。

 コウモリは洞窟を好んで生息しているが、ネバダ州でグアノを探していた2人の鉱山労働者が1911年に巨大な洞窟「ラブロック洞窟」を初めて発見した。そこにはグアノが豊富に堆積していたのだが、洞窟の奥深くに進んでみると 数十体の古代人の遺骸に遭遇することになった。驚いたことに遺骸の多くは一般的な人間のものよりも大きく身長がきわめて高かった。この地にかつて“巨人族”が生息していたのだろうか。

 1912年と1924年に本格的な洞窟の調査と発掘が行われ、60体もの古代人の遺骸と何千もの遺物が回収された。

画像は「Wikimedia Commons」より

 これらの発見物の多くはカゴ、アヒルの置物、矢じり、動物の形を彫った儀式用の物品などであったが、巨大なサンダルなどの奇妙なモノも混ざっていた。ちなみにサンダルの大きさは38センチ(15インチ)で、米国サイズの29の靴に相当する。

 その後の放射性炭素年代測定により、洞窟内の古代人の遺骸と植物の遺物は紀元前2030年から紀元前1218年の間のものであることが突き止められた。

 もう一つの奇妙な発見は、洞窟の壁に平均的な人間の手の2倍の大きさに見える石に刻まれたと思われる手形が数多く存在していたことだった。

 巨大な人間の頭蓋骨、38センチのサンダル、巨大な手形といった物証から類推される“巨人”の身長は2.6~3メートルであったことが1931年に報告されている。そして洞窟の名にちなんでこれらの人骨は「ラブロックの巨人」と呼ばれることになったのだ。

 霊長類の歴史の中でかつて巨人の種族が存在していたのだろうか。

画像は「Daily Mail」の記事より

■巨人種族の“終焉の地”だったのか?

「ラブロックの巨人」の存在を裏付けているのが地元先住民族の伝承である。色白で赤毛の残忍な侵略者である巨人部族が地元のグループに戦争を仕掛け、最終的に洞窟に閉じ込められて絶滅したというストーリーがこの一帯の先住民族であるパイユート族の間で語り伝えられているのだ。

 パイユート族の伝承によると、約3000年前に「シテカ族」と呼ばれる赤い髪の野蛮な部族がこの地域を侵略し、周辺の部族に戦いを挑んだのである。

 シテカ族は獰猛で強かったが、一帯の部族は団結して共同戦線を築き、最終的にシテカ族をラブロック洞窟に追い込み、無数に矢を放ち、入り口に火をつけて全滅させたというのだ。

 ちなみにラブロック洞窟の入り口で大昔に大規模な火災があった痕跡が考古学的調査で確認されているという。

ラブロック洞窟 画像は「Wikimedia Commons」より

 パイユート族のメンバーであり、部族の歴史研究者であるサラ・ウィネマッカ・ホプキンスは洞窟の発見前の1883年にパイユート族についての本を書いており、その中には野蛮人についての言及があるのだが、それが巨人種族であったのかどうかについての記述はないようである。

 ネバダ大学の研究によると、「巨人」の遺体は単に背の高い者であった可能性があり、その結果、彼らの身長は3メートルではなく、平均すれば180センチほどであったことを示唆している。

 そして一部の歴史家からは、乾燥した砂漠の環境で老化すると黒髪が赤くなる可能性があり、これが赤毛の遺骸を説明する可能性があると指摘している。

 さらに、歴史家のエイドリアン・マイヨール氏は著書『Fossil Legends of the First Americans(最初のアメリカ人の化石伝説)』の中で、地元の起業家らがこの地域の観光業を盛り上げるために古代人の遺体の大きさを誇張したのかもしれないと書いている。

 ネバダ州ウィネマッカの歴史博物館には現在、ラブロック洞窟で発見された多くの遺物が収蔵されている。考古学者らによると「ラブロックの巨人」の話はおそらく事実の誇張、あるいは捏造である可能性が高いが、その物証の一部は依然として信じる者を魅了しているようだ。古代の巨人伝説が今後新たな展開を見せることはあるのだろうか。

参考:「Daily Mail」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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