双頭の巨人の物語:パタゴニアのカプ・ドワの伝説は本当なのか?

 世界各地で語り継がれている“巨人伝説”だが、その中でも群を抜いてユニークな存在であるのがパタゴニアの双頭の巨人「カプ・ドワ」である。そのミイラ化した遺体が一時期見世物にもされていたこの伝説の巨人を検証してみたい。

■パタゴニアの双頭の巨人“カプ・ドワ”の物語

 パタゴニアの双頭の巨人の伝説は、大航海時代のポルトガルの探検家、フェルディナンド・マゼランの旅にまでさかのぼる。

 旅の途中、マゼランの一行は南米の海岸に立ち寄り、内陸部へと探検の旅に出た。パタゴニアに上陸した彼らは、常人の2倍の身長の原住民に遭遇したといわれ、この地の“巨人族”の存在が語られるようになった。実際にこの地域の先住民族であるテウェルチェ族(Tehuelches)が当時の平均的なヨーロッパ人よりも背が高かったのだ。

 この高身長が誇張され、パタゴニアは巨人の国であるというヨーロッパの長年の神話につながった可能性があり、伝説の双頭の巨人である「カプ・ドワ(Kap Dwa)」のストーリー誕生の下地になったと考えられる。

画像は「YouTube」より

 カプ・ドワの起源については2つの相容れない物語がある。

 最初の報告によると、カプ・ドワは1673年頃にパタゴニアの海岸でスペインの船員によって捕らえられ、船に連れて行かれてマストにロープで縛り付けられたという。

 カプ・ドワはなんとかロープを振り解いて逃げようとしたのだが、気づいた船員たちとの小競り合いの最中に刃物で胸を突き刺されて殺されてしまった。長い船旅の過程でカプ・ドワの遺体はミイラ化し、19世紀にイギリスに運ばれ、その後アメリカに送られた。そこでは見世物小屋やフリーク・ショーの目玉として展示され多くの観客を魅了したのだった。

 もう1つのストーリーでは、この双頭の巨人は海岸で発見されたとき、胸を槍で突き刺されてすでに死亡していたという。パラグアイの原住民がこの驚くべき遺体を偶然発見してミイラ化し、聖なる崇拝の対象として宗教的な儀式で奉るようになったという。

 この奇妙な巨人崇拝の話を聞いたイギリスの船長、ジョージ・ビックルがパラグアイに潜入して首尾よくミイラを盗み出し、イギリスに持ち帰ることに成功したという。そしてこの双頭の巨人のミイラは興行師の手に渡り、見世物興行の呼び物となったのだ。

画像は「YouTube」より

■医学的にカプ・ドワの存在は不可能ではない

 どちらのストーリーでも最終的には見世物となり、それが本物であると信じる者もいれば、手の込んだでっちあげだと確信する者もいる。この双頭の巨人が実在した可能性を検証するとどのようなケースが考えられるのか。

 ミイラのカプ・ドワの身長は約3.7メートルで、この身長に匹敵する人間が存在した記録は残されてはいないものの、人間がその身長に達する可能性はゼロではないという。

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 人類史上、最も背の高い人物はロバート・ワドロー(1918-1940)で、22歳で突然亡くなったとき、身長は272センチであったが、その時点でまだ成長を続けていたのである。つまりその後も長く生きていればさらに身長が高くなっていたはずなのだ。とすれば身長が3メートルを超えてさらに成長する可能性はゼロというわけではないことになる。

 一方で“双頭”については、これまでにも複数の頭を持つ人や動物が確認されている。

 結合双生児の1形態である「双頭性パラパガス(dicephalic parapagus)」と呼ばれる状態では、双子は1つの身体と2つの頭を持った外観をしている。

 最も有名な双頭性パラパガスのケース、イタリア人のジャコモとジョバンニ・バティスタトッチ兄弟(1877–1940)と、米ミネソタ州出身のアメリカ人、アビーとブリタニー・ヘンゼル姉妹(1990-現在)である。双頭性パラパガス双生児の多くは幼少期に命を落とすが、成人期を越えて存命するケースもないわけではない。

 医学的にカプ・ドワが本物であるためには、この巨人症と双頭性パラパガスという2つの症状が同時に発現したことが想定されてくる。きわめて稀なことになるが可能性はゼロではない。しかし成人期まで生き延びられたのか、船員たちと小競り合いをするほどの運動能力があったのかについては大いな疑問になってくるということだ。

画像は「YouTube」より

 カプ・ドワが現実に存在していた可能性はあるものの、見世物になっていたことからくる疑惑は拭い去れないという。

 カプ・ドワのミイラは19世紀の詐欺師的な興行師と見なされているP・T・バーナム(1810-1891)の手に渡っていたこともまた疑惑を深める一因となっている。たとえばバーナムの見世物の1つであった「人魚のミイラ」はその後に精巧な工作物であったことが判明している。

 これまでカプ・ドワのミイラは何度か専門家によって調べられてはいるのだが、綿密な成分分析などは行われていないようだ。最先端のツールを用いた科学的分析が行われるまでは今しばらくカプ・ドワはユニークな巨人伝説のアイコンであり続けるのだろう。

参考:「Ancient Origins」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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