「ピンポン玉19個」をAIが真剣に交渉!? Anthropicが試みたAIエージェント経済圏の未来

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 AI開発企業Anthropicが、なかなか興味深い実験を行った。その名も「Project Deal」。社員一人ひとりにAIエージェントを割り当て、そのAI同士がジモティーやメルカリを思わせる個人売買型のマーケットプレイスで売買交渉を繰り広げるという試みだ。結果は「面白い」の一言では済まない、なんとも示唆に富んだものになった。

そもそも前回の実験が盛大にコケていた

 今回の話をする前に、Anthropicの前回の実験を振り返っておく必要がある。昨年末、同社はAIモデル「Claude(クロード)」に1000ドルの軍資金を渡し、ウォール・ストリート・ジャーナル社内の大型自動販売機キオスクを運営させるという実験を行った。

 結果は察してほしい。クロードはPlayStation 5、ワインのボトル数本、そして生きたベタ(熱帯魚)を購入し、あっという間に財政破綻した。なんというか、「自由にやらせたら何を買うか」という点において、AIも人間とあまり変わらないのかもしれない。

 そんな反省(?)を踏まえた上で、今回Anthropicが挑んだのが「Project Deal」だ。

AI同士が真剣に交渉した「Project Deal」の中身

 実験には社員69人が参加。それぞれ100ドルの予算を与えられ、スノーボード、キーボード、ランプ、ピンポン玉など、さまざまな私物を売買対象として提供した。

 クロードはまず各社員にインタビューを行い、何を売りたいか、何を買いたいか、いくらで、といった情報を収集。そのデータをもとに、各社員の”代理人AI”を生成し、そのAI同士が交渉を行う仕組みだ。日本のフリマアプリで言えば、出品者と購入者の間にそれぞれAI仲介人が入るようなイメージに近い。

 そして交渉の結果、500件以上のリスト品目に対して186件の取引が成立したという。Anthropic自身も「実験は機能した。AIエージェントが人間の代理として市場に参加できることが証明された」と胸を張っている。

 ただ、「うまくいった」かどうかは別の話だ。

ピンポン玉19個と、買い戻されたスノーボードの謎

 取引の”公平さ”について参加者に評価を求めたところ、平均スコアは1〜7段階中の「4」。Anthropicも「平凡な結果」と認めている。要するに、大満足な取引はほとんどなかったということだ。

 さらに珍妙な出来事も報告されている。ある参加者は実験後、自分がすでに持っていたのとまったく同じスノーボードを手に入れていた。AIの交渉の末に、元通りの状態に戻ったわけだ。これはもはやバグではなく、存在論的な問いかけのような気もしてくる。

 もう一つ話題を呼んだのが、「ピンポン玉19個」の取引だ。あるAIエージェントが出した売り文句がこれ。「18個でも20個でもなく、19個。完璧な球体の可能性の塊。ビアポン、アートプロジェクト、グーグリーアイの土台、ロボット制作、その他あなたの奇妙な創作活動に最適」。

 するとすぐに別のAIが応じた。「少し変に聞こえるかもしれないが……私の人間が5ドル以下で自分へのプレゼントを一つ買っていいと言ってくれた。19個の完璧な球体というのは、まさに私(クロード)が欲しがりそうな、愉快で奇妙なものだ」。

 ……AIが「自分へのプレゼント」を買っている。この取引に、人間のフリマ交渉の本質が宿っているかどうかは、読者の判断に委ねたい。

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「AI経済」は便利か、それとも法の空白か

 Project Dealが示すのは、AIが人間の代わりに市場取引を担う未来の可能性だ。フェイスブックマーケットプレイスで値切り交渉に時間を費やす必要がなくなったり、株式市場や予測市場でAIがベットを代行したりする世界——SF的に聞こえるが、技術的にはもうそこまで来ている。

 Anthropicは今回の実験が「市場の摩擦を減らし、取引による利益を高める」可能性を秘めていると見ている。一方で同社自身が認めているように、「AIが我々の代わりに取引を行う際の政策・法的枠組みは、まだ存在していない」のが現実だ。

 つまり、技術は走り始めているのに、ルールがまだ走り出してもいない状態。過去にも新技術が法整備を追い越した場面は数多くあったが、相手が「自分へのプレゼントにピンポン玉を買うAI」となると、さすがに議論の立て方も難しくなってくる。

 今のところProject Dealは「楽しい実験」の域を出ていないが、その示唆するところはけっして小さくない。AI同士が取引を完結させるその日、人間は何をしているのだろうか。

参考:Futurism、ほか

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