【TOCANA的UMAファイル #01】「クッシー」── 魚のいない湖で半世紀愛され続けた怪獣

北海道・屈斜路湖。この湖には、まともな魚がほとんど棲んでいない。1938年(昭和13年)の地震で湖底から硫酸塩が噴き出し、水がすっかり酸性になってしまったからだ。ところが、この“魚の棲めない湖”には、体長20メートル級の巨大怪獣が半世紀にわたって目撃され続けてきた。名前はクッシー。……こいつは一体、何を食べて生きているんだ?
基本データ
名前:クッシー(Kussie)
生息地:北海道・弟子屈町 屈斜路湖(日本最大のカルデラ湖)
初出:1970年代のはじめ
姿:首長竜タイプの証言が目立つが、体長は資料によって5〜30メートルと幅があり、馬に似た顔や角のような突起を語る証言も混じる。定番の描写は、背中の二つのこぶ、銀色に光る目、焦げ茶色の体
由来:もちろん、あの「ネッシー」にあやかった命名
クッシー事件簿
クッシーの名を全国に轟かせたのは、1973年の夏だった。北見からやってきた中学生およそ40人が、藻琴山への登山遠足の途中、屈斜路湖の湖面を動く“二つのこぶ”を集団で目撃したのである。なにしろ目撃者が40人。多勢に無勢で、騒動は一気に全道から全国へと広がった。
以後、目撃は雪崩を打つように続く。翌1974年には、一家が湖面を動く二つの黒い物体を目撃。物体は「丸太を10本まとめて放り込んだような」轟音とともに水中へ消えた。
1975年には、馬を連れて湖畔で作業していた林業の男性が、馬が突然おびえ出したので湖に目をやると、50メートルほど先に「馬の頭よりずっと大きい、銀色の目を光らせた焦げ茶色の顔」がぬっと突き出ていたという。
極めつけは土産物店の店員の証言だ。夜中、湖の方から「ダッポン、ダッポン」という得体の知れない音が聞こえたという──。
ホントカナ?
正体候補は、この手のUMAの定番どおりだ。アイヌには古くから、湖の主を巨大なアメマスとする信仰があり、恋人を湖の中島まで運ぶ大蛇の伝説も伝わっていた。懐疑派に言わせれば、正体は波や流木、あるいは湖を泳ぐエゾシカやヒグマの誤認だろう、となる。
ところが、この湖にはほかのUMAにはない“決定的な矛盾”がある。冒頭で書いたとおり、屈斜路湖は酸性湖で、まともに棲める魚はトゲウオくらいしかいない。体長20メートルの巨大生物が、いったい何を食べて生き延びているというのか。
この難問に、地元は“科学的”に挑んだ。湖にイカ・イモ・野菜を仕掛けて、何が減るか調べたのだ。すると翌朝──イモも野菜も無傷のまま、なぜかイカだけが、歯で食いちぎられた状態で見つかった、という。「クッシーはイカを食べるのでは」。北海道の淡水湖に、イカを常食する首長竜。謎はいっそう深まった。

TOCANA的まとめ
1980年代以降、クッシーの目撃はぱたりと減り、2000年代を最後にほぼ途絶えている。
だが、弟子屈町のクッシー熱だけは本物だった。湖畔にはクッシー像が建ち、道路は「クッシー街道」と名づけられ、「クッシーを守る会」まで発足。隣の美幌町のホテル経営者にいたっては「ネッシーとクッシーは姉妹」という設定をこしらえ、歌手・田中星児が歌う『ネッシーとクッシー』なる楽曲まで世に送り出した。そして極めつけが「クッシーフライドチキン」である。ある研究者が「普通のフライドチキンと何が違うのか」と尋ねたところ、返ってきた答えは「普通のから揚げです」だった──という。
クッシーが実在するかどうかは、正直、もうどうでもいいのかもしれない。魚もいない酸性の湖に、町ぐるみで半世紀“棲まわせ続けた”──その執念こそがクッシーの正体なのかもしれない。
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