スーツケースに座り、旅立つ背中に水をぶちまける —— 世界で今も生きている「奇妙すぎる旅の迷信」8選

統計上は、飛行機事故に遭うより落雷に打たれるほうが起こりやすいと言われる。それでも世界中の旅行者は、かばんに生のニンニクを放り込み、旅立つ人の背中に水をぶちまけ、玄関先でスーツケースの上に無言で腰を下ろす。
今も各地で大真面目に実践されている旅の迷信を8つ紹介しよう。
出発前の一手間:座り、唾を吐き、水をまく
1. スーツケースの上に座る(スラブ圏)
家を出る前に一家そろって荷物の上に無言で腰かける。異教時代に起源を持つとされる習慣で、この沈黙の数十秒が悪いエネルギーを払い、悪霊を遠ざけると信じられてきた。荷物が圧縮できるのは副産物である。
2. 肩越しに3回唾を吐く(ノルウェー)
見送りの言葉として、唾を吐く音を模した「トゥヴィ・トゥヴィ」を口にする。英語圏の「Break a leg(足を折れ)」と同じ発想で、あえて不吉な音を出し「こいつはもう不運を消化済みだ」と悪霊に思わせる作戦だという。呪いの形をした祝福である。
3. 旅立つ背中に水をまく(セルビアなどバルカン半島・中東)
水はよどみなく流れるものの象徴で、旅も流水のように滞りなく進むように、との願いが込められている。日本では塩をまくが、あちらは水。帰ってほしくない客に浴びせているわけではないので、誤解なきよう。
4. 見送った後は箒を持たない(ブルガリア)
旅立った直後の掃き掃除はご法度とされる。うっかり掃くと、その人の幸運や生命まで掃き出してしまうというのだ。「立つ鳥跡を濁さず」の真逆をいく作法である。
数字のタブー:4も13も17も避けたら、乗れる便は残るのか
5. 「4」「13」「17」を避ける
西洋ではキリスト教に由来する13が、東アジアでは「死」と音が重なる4が嫌われる。そしてイタリアでは17が忌み数だ。ローマ数字のXVIIを並べ替えるとラテン語の「VIXI」——「我が人生は終わった」と読めてしまうためだという。
座席番号や部屋番号からこれらの数字が抜けているのは航空・ホテル業界ではおなじみだ。迷信が実際に設計図を書き換えている例である。
6. 金曜日の出発を避ける(ヨーロッパ)
キリストが磔刑に処されたのが金曜だったことと、船乗りたちの言い伝えが重なり、金曜出発は不吉とされてきた。かつては王侯貴族すら金曜の船出を嫌ったという。週末旅行が金曜夜に集中する現代人には、継承の難しい掟だ。
お守りはかばんの中にも、機体の外にも
7. ニンニクをかばんに忍ばせる(バルカン半島・ギリシャ・イタリア)
生のニンニクひとかけが旅のトラブル、とりわけ国境の検問での不運を遠ざけるとされる。「邪視(イーヴィル・アイ)」から身を守る民間伝承に由来するというから、ニンニクの守備範囲は吸血鬼だけではないらしい。ただし荷物の匂いには覚悟は必要だ。
8. 搭乗前に機体をポンと叩く
タラップで機体の外板に触れてから乗り込む——欧米では珍しくない仕草だという。搭乗前のささやかな祝福であり、飛行機が苦手な人が自分を落ち着かせる儀式でもある。神頼みというより、自分の心拍数への声かけに近い。
8つの迷信に共通するのは、天候も機体の整備状況も自分ではどうにもできない旅に、「自分にもできること」を一つだけ差し込んでいる点だ。上空約9000メートルで震えているくらいなら、離陸前にニンニクを放り込んでおくほうが精神衛生上は健全なのかもしれない。もっとも、旅で本当に致命的なのは迷信を忘れることではなく、パスポートを忘れることだろう。
参考:Mental Floss、ほか
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