夜空を真っ二つに割った「青いレーザー光」が30分間も消えなかった! ブルージェット説も火球説も退けられ、スペイン・グラナダの謎は未解決

夜空が真っ二つに割れた。そんな表現がふさわしい光景が、スペイン南部の空に現れた。
2026年9月14日の夜、グラナダの上空を、定規で引いたように鋭い青い一本の線が地平線から地平線まで貫いたのだ。目撃されたのは22時30分ごろ。しかもその線は、30分にわたって消えなかった。
22時30分から30分間、空に張りついたままだった「青い直線」
撮影された映像には、水平方向に空を横切る細く鋭い光の筋が写っている。重要なのは、この線が地上から斜めに立ち上がっているようには見えなかった点だ。地表から放たれたというより、もっと高い一点から伸びているように見えたという。
光の色も手がかりになる。レーザー光は波長が445ナノメートルを下回ると、人間の目には紫がかった青として認識される。一部の化学物質に蛍光反応を起こさせるほど短い波長であり、この青さ自体が光源の性質を絞り込む材料になる。
映像がSNSに投稿されると反応は爆発的に広がったが、飛び交ったのは「絶対にこれだ」という断定ばかりだった。この現象を取材したスペインのジャーナリストで超常現象研究家のジョセップ・ギハーロ氏は、断片的な知識ほど自信満々に語られるというダニング=クルーガー効果の典型例だと苦言を呈している。
ブルージェット説と火球説は、なぜ早々に退けられたのか
まず挙がったのが「ブルージェット」説だ。超高層大気で発生する発光現象、いわゆるTLE(高高度発光現象)の一種で、その名の通り青い。次に挙がったのが火球、つまり大気圏に突入した流星である。
実際、この週末のアンダルシア地方では火球や彗星の残骸とみられる発光が各地で記録されており、混同されても無理はない状況だった。
だが、どちらの説も決定的な難点を抱える。ブルージェットも火球も、持続時間はせいぜい一瞬から数秒程度の極めて短命な現象だ。30分間も空に張りついたままの光を説明することはできない。
そこでギハーロ氏が当初想定したのが、気象観測用のLiDAR(光検出・測距)だった。スペイン南部ではサハラ砂漠から飛来する砂塵、いわゆるカリマの観測が日常的に行われている。しかし、その裏付けは取れていない。
天文台の校正用レーザーか、それとも誰かの「宣伝」か
同じ週末、マドリードやグラナダ県内の町でも似た光線が目撃されており、これらはパーティーなどで使われる市販のレーザーだと説明されている。
ただしギハーロ氏は、ステージ照明用の光源や市販レーザーでは、グラナダの映像が示すほどの到達距離と輪郭の鋭さは出ないと指摘する。あれほどの出力を空に向ければ航空機の運航に危険が及ぶという問題もある。彼は航空管制関係者に対し、科学目的のレーザー試験を告知するNOTAM(航空情報)が出ていなかったかを照会したが、回答は得られていない。
候補がないわけではない。天文台は観測機器の校正にレーザーを使う。グラナダにはカルトゥハとシエラネバダの2つの天文台があり、近隣にはカラル・アルトもある。
また、同種の光が「見せ物」だった前例もある。昨年イギリスのイズリントンで報告された空を裂く光線は、スロバキア企業KVANTの新型空中レーザー「LiGHT25」の宣伝キャンペーンだったことが判明し、警察が臨場して消灯させている。理由はやはり航空の安全だ。米オクラホマ・コンテンポラリーの展覧会「A Beam In The Sky. The Laser」に関連したレーザーがRedditで話題になった例もある。
ネット上では今も憶測が飛び交い、新たな画像が次々と投稿されている。皮肉なことに、こうした「間違った答え」の氾濫こそ正解への最短ルートだ、というのがインターネットの経験則でもある。質問を投げるより堂々と誤答を掲げたほうが、詳しい人間が訂正しにやってくる。いわゆるカニンガムの法則だ。
とはいえ航空当局への照会にも回答はなく、グラナダの空を30分間分断した青い線の正体を、現時点で誰も確定させていない。いずれ地上の誰かが放った光だったと判明する日が来るのかもしれない。それでも、あの夜に空を見上げた人々が「天が裂けた」と感じた一瞬の畏れまでは、どんな合理的な説明も回収できないだろう。
参考:Espacio Misterio、ほか
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