【UFOファイル第6弾】ワープドライブ、ワームホール、そして「被曝した技術者」

画像は「war.gov」より

 2026年9月18日(現地時間)、アメリカ国防総省(現・戦争省/Department of War)が、UAP(未確認異常現象)の機密解除ファイル「第6弾」を公開した。

 今年5月から始まった一連の開示は、トランプ政権下の「PURSUE(大統領UAP遭遇開封・報告システム)」という枠組みの一環だ。だが今回の第6弾は、少し毛色が違う。目玉が「UFO映像」ではないのだ。飛び出してきたのは、米政府が真顔で「ワープドライブ」や「ワームホール」を研究していた証拠、そして──謎の航空宇宙システムによって「被曝」した人間の記録だった。

 今回の放出は合計71件(国防総省67件、コロラド州警察4件)。PDF文書55件、動画15件、音声1件で、うち64件に黒塗りが入っている。文書の年代は1952年から2025年までと幅広い。「全部オープンにした」とはとても言えない、相変わらずの小出しっぷりである。

政府が「ワープドライブ」を研究していた証拠

 今回もっとも注目されているのが、「AAWSAP(先進航空宇宙兵器システム応用計画)」に関する文書群だ。米国防情報局(DIA)が2008年に立ち上げ、2012年に終了した計画で、億万長者ロバート・ビゲロー氏の民間企業が関わっていたことでも知られる。

 今回、このAAWSAPが発注した「DIRD(国防情報参照文書)」が37本まとめて公開された。テーマを並べると、SF好きなら前のめりになるはずだ。ワープドライブ(空間のねじ曲げ航法)、通行可能なワームホール、反重力、負の質量による推進、量子真空からのエネルギー抽出、時空計量の工学、そして「不可視化(透明マント)」──もはや、どこかの秘密結社の研究計画書である。

 ただし冷静になっておきたい点がひとつ。CBSによれば、この37本は実は目新しいものではなく、すべて情報公開法(FOIA)などで何年も前から公開されていた文書だという。今回は伏せられていた「作成部署名」などが一部追加された程度の違いだ。ペンタゴン自身も注記で、これらは「独自研究というより参照・統合のための資料」であり、「概念を現時点で政府が正しいと認めたことを意味するものではない」とクギを刺している。

 つまり「政府がワープドライブを握っている」話ではなく、「金を出して物理的な可能性を”検討させていた”」というのが実際のところだろう。とはいえ、DIAという情報機関がわざわざ予算を割いてこうしたテーマを発注していた事実そのものは、やはり見過ごせない。

画像は「war.gov」より

最大の”闇”は「被曝した3人の技術者」

 派手なワープドライブの陰で、じつは今回もっとも不穏とされるのが、2010年作成の38ページの技術報告書だ。タイトルは「人体組織に対する異常な急性・亜急性の場の影響」。テーマは、はっきり言えば「謎の航空宇宙システムによって、意図せず負傷させられた人間」の分析である。

 CBSが伝える中身はこうだ。もともと健康だった3人が、それぞれ「異常な(不規則で、辻褄が合わず、既知の枠組みと矛盾する)航空宇宙関連の事象」を経験。その後、皮膚の熱感や赤み、脱毛に見舞われ、うち1人には「放射線障害の兆候」が、さらに数年かけて「悪性化(がん化)の兆候」まで現れたという。

 報告書は被曝の”発生源”を特定していない。ただ、この3人が「アンテナ技術者」だったことは明記している。この文書を書いたのは、元CIAの法医学者として知られるクリストファー・”キット”・グリーン博士だ。彼は、原因の判明している通常の高周波障害の事例(論文化42件、未公表約300件)と比較したうえで、こう記している。要約すれば──「すでに配備されており、かつ米国が完全には把握できていない”何らかの先進システム”が存在するという仮説を支えるだけの事案が、正確に報告され、医学的データも取得されている」。

 原因がUAPと関係するのかは断定されていない。実際、このグリーン論文には手厳しい反論もある。グリーン博士自身が後年、扱ったケースは地球外や超常のものではなく「人間によるもの」だと考えていると語っているうえ、問題の「アンテナ技術者3人」も、引用元をたどると飛行物体は登場せず、送信アンテナ群に近づきすぎて負傷しただけではないか、との指摘が出ている。それでも、政府の内部文書に「原因不明の技術に人間が傷つけられた」記録が残っていたこと自体は、映像の一枚よりよほど生々しい。

画像は「war.gov」より

甦る「トレモントン事件」──74年前の空の謎

 歴史ファイルで目を引くのが、UFO史の古典「トレモントン事件」のフィルムだ。1952年7月2日、米ユタ州トレモントン近郊で、米海軍の航空写真専門の准尉デルバート・C・ニューハウス氏が、ベル&ハウエル製カメラで空を舞う12〜14個の反射する物体を撮影した。空軍のUFO調査計画「プロジェクト・ブルーブック」でも扱われた由緒ある映像である。ペンタゴンの文書は、ニューハウス氏を「正直で信頼でき、1000時間以上の航空写真経験を持つ専門家」と高く評価している。

 面白いのは、同じフィルムを見ても専門家たちの結論がバラバラだった点だ。空軍の調査官は正体を特定できず、海軍の写真専門家は「航空機・気球・鳥」では不十分と判断。1952年末にゼネラル・ミルズ社などが検討した際は「ピロー・バルーン(枕型の気球)に似ている」が多数派だったが、同社の担当者の1人は「明るすぎるし動きが速すぎる」と納得しなかった。1953年にCIAが招集した「ロバートソン・パネル」は、太陽光を反射した鳥の群れ説に傾いた。

 74年経っても決着しない最大の理由は素朴なものだ。フィルムには物体までの距離の手がかりがなく、距離がわからなければ大きさも実際の速度も特定しようがない。近くの小さな物体でも、遠くの巨大な物体でも、映像上は同じに見えてしまう。トレモントンは「宇宙船の証拠」としてではなく、「同じ映像から専門家が別々の結論に至った例」として、いまなお語り継がれている。

800件のうち20%は「答えが出せない」

 もうひとつ、マニアに歓迎されているのが、1952年3月のエドワード・J・ラッペルト大尉の講演の音声録音(約1時間)と文字起こしだ。のちにブルーブックを率いる、初期UFO調査の中心人物である。彼はこの中で、空軍が調査した約800件のUFO報告のうち、約20%が依然として謎のままだと明かしている。「非常に信頼できる人物による非常に良質な報告でありながら、まったく何の結論も導き出せない」ものが2割あった、というのだ。

 後年の統計分析(「特別報告書14号」)でも、むしろ「良質」と評価された報告ほど「未確認」に分類される割合が高いという、据わりの悪い結果が出ている。目撃者の質が低いから謎が残る、という単純な話ではなさそうなのだ。

いつもの「軍のUFO映像」も、もちろんある

 おなじみのザラついた軍用カメラ映像も入っている。2022年に中東で撮影された、時速80〜180マイル(時速約129〜290km)で飛ぶ1〜2メートルほどの物体。2025年に中東上空で、6個の小さな球状物体が編隊を組み機敏に方向転換する様子。そして今回初登場の、コロラド州警察が2023年10月に携帯で撮影した4本の映像。通報した警官は現象を「無音」で「赤・青・緑の点滅する光」と描写している。

 なお、UAP調査を担う米政府機関「AARO(全領域異常解決局)」は、これらに慎重な注意書きを添えている。オートフォーカスやデジタル処理、手ブレ補正、ズームが、物体の形や動き、構造を実際とは違って見せることがある──と。映像は必ずしも真実をそのまま写すわけではないのだ。

結局、宇宙人の遺体は出たのか

 開示直前、海外のUFOコミュニティでは「今度こそ回収された宇宙船や”非人間由来の生体物質”が出るのでは」という期待が膨らんでいた。結論から言えば、遺体も、生体サンプルも、解剖記録も、回収作戦の文書も、いっさい出てこなかった。期待した層からは「がっかりだ」との声も上がっている。

 とはいえ見方を変えれば、ひとつの情報機関のプログラムが「どう定義され、契約され、どんな研究で満たされたか」の流れが、これだけまとまって公文書アーカイブに載ったのは初めてだ。ペンタゴンの報道官ショーン・パーネル氏は今後もローリング方式で公開を続けると声明を出しており、9月15日には、NDA(秘密保持契約)に縛られていた現・元職員がUAP情報を政府に共有できる「法的免除措置」の創設も発表された。今後の展開次第では、まだ何か出てくるのかもしれない。

まとめ

 今回のファイルは「宇宙人はいた!」というわかりやすい花火ではなかった。出てきたのはもっと地味で、それゆえ厄介な事実である。米国政府は、ワープドライブからワームホールまでSFと区別のつかない技術を、真顔で予算を割いて研究させていた。その一方で、原因不明の”何か”に人間が傷つけられた記録を抱え、74年前の空の謎はいまだ解けていない。

 宇宙人の遺体と、この現実との間には、まだ相当な距離がある。だが、その距離を「ゼロだ」と言い張るのも、「無限だ」と切り捨てるのも、どちらも早すぎるだろう。

参考:WAR.GOV/UFOCBS News、ほか

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