生者には開けられない「あの世専用の扉」!4000年前の古代エジプトの墓の謎

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画像は「EGYPTIAN TOURISM AND ANTIQUITIES MINISTRY」より

 エジプトのサッカラ砂漠に眠る巨大な墓地遺跡から、今もなお古代エジプト人の死生観を伝える発見が相次いでいる。

 今回、考古学者たちが掘り出したのは、今から4000年前、古王国時代の高官セケンチウ・プタハの墓だ。すでに盗掘の被害に遭っていたものの、玄室の奥には生者には決して開けられない、あの世専用の「」が残されていたという。

 エジプト観光・考古省が発表したこの発見は、ピラミッド建設が本格化し始めたばかりの時代を生きた、一人のエリートの人生と死後の旅を静かに物語っている。

死者だけが行き来できる「偽りの扉」

 サッカラのブバステイオン地区で見つかったこの墓は、石灰岩をくり抜いて作られた「マスタバ」と呼ばれる形式の墓だった。地区名は後代に築かれた猫の女神バステトの神殿に由来する。

 調査チームが墓所の祭祀室跡を調べたところ、壁に彫り込まれた「フォルスドア」――偽りの扉が姿を現した。エジプトの墓によく見られるこの構造は、かつて盗掘者を欺くための飾りだと考えられてきた。

 しかし実際の役割は正反対だったという。生きた人間には決して開けることのできないこの扉を通じて、死者の魂が自由にあの世とこの世を行き来できると信じられていたのだ。

 扉の前には浄めの水盤、供物台、供物皿が並べられていた。そこに刻まれたヒエログリフには、セケンチウ・プタハが宮廷の侍従長、王の造営責任者、王の文書管理官、書記監督、そして正義と秩序の女神マアトに仕える神官など、数々の要職を歴任していたことが記されていたという。

女神マアトの神官と「心臓の秤」

 マアトに仕える神官は、単なる宗教職ではなく裁判官的な役割も担っていたとされる。エジプト人は「真実と均衡」の原則に従って生きることを求められ、不誠実な行いは重い罪とみなされた。

 こうした信仰は死後の運命にも直結していた。エジプト神話では、死者の心臓は女神マアトの羽根と天秤にかけられる。もし心臓が羽根より重ければ、ワニの頭とライオンの前脚、カバの後ろ足を持つ怪物アミトに食われてしまうと信じられていたという。

 ミイラ職人が遺体の心臓の上にスカラベの護符を置く風習も、この審判を意識したものだったとする見方がある。生前の悪行を覆い隠し、心臓を少しでも軽く見せるための工夫だったというのだ。

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盗掘を免れた100体超のシャブティ像

 墓の周辺では、過去に盗掘された痕跡のある埋葬坑群も見つかった。坑内は荒らされていたものの、人骨や副葬品の一部は今も残っていたという。

 中でも注目されるのが、100体を超える「シャブティ」像の発見だ。シャブティは死者に代わってあの世で労働を担う従者の像で、もともとは王族のみが墓に納めていたとされる。

 ファイアンスと呼ばれる青や緑、ターコイズ色の釉薬をかけた陶器で量産する技術が確立されると、シャブティは庶民の墓にも広く普及していったという。

 サッカラは古王国時代の遺跡から後代の埋葬までが幾重にも折り重なる、世界遺産に登録された広大な墓地群だ。エジプト観光・文物省は今夏、道路や設備を整備し観光客が巡りやすい環境を整える事業にも着手しており、今後も発掘調査と科学的分析を継続する方針を示している。

 盗掘者の手を逃れた副葬品の数々は、4000年前を生きた一人の官僚の信仰と誇りを今に伝えている。生者には開けられないはずのあの扉の奥で、セケンチウ・プタハは今もマアトの審判を待ち続けているのだろうか。

 砂に埋もれたサッカラの地には、まだ見ぬ「あの世への入り口」が眠っているのかもしれない。

参考:Popular Mechanics、ほか

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