魔術結社「黄金の夜明け団」の原点、ドイツの知られざる秘密組織「LLL」とは…謎に満ちた暗号文書の真実に迫る!

黄金の夜明け団の薔薇十字徽章 画像は「Wikipedia」より

 ヴィクトリア女王治下の19世紀末、イギリスは最盛期を迎え、空前の繁栄を謳歌していた。世界に先駆けて進展した産業革命の結果、工業力が飛躍的に拡大し、「世界の工場」とも呼ばれるようになった。

 一方、急激な変化は社会の矛盾も増大させ、貧富の格差も増大、労働争議も頻発、同時に、各種オカルト哲学に関心も高まった。

 ラファエルやアラン・レオ、ザドキエルなど、現在用いられている技法を編み出した占星術師が排出したのもこの時期だし、1865年のイギリス薔薇十字団、1882年のイギリス心霊研究協会、1887年の神智学協会ブラヴァツキー・ロッジと、心霊主義や神秘主義関係の団体も相次いで結成された。


■「黄金の夜明け団」誕生の背景とは?

 1888年、魔術結社ゴールデン・ドーン(黄金の夜明け団)が設立されたのも、こうした時代背景と無縁ではないだろう。

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魔術結社ゴールデン・ドーンの設立許可証 画像は「Wikipedia」より引用

 設立したのは、ロンドン警察の検死官も務めていたウイリアム・ウイン・ウェストコット、医師のロバート・ウッドマン、そして、当時から魔術研究家として知られていたサミュエル・リドル・マクレガー・メイザーズの3人である。

 設立者の一人ウェストコットは、友人のアレキサンダー・ウッドフォードから託された暗号文書の中にドイツの魔術結社員アンナ・シュプレンゲルの連絡先を見つけ、彼女と文通した結果イギリスでの魔術結社設立の許可を得たとしている。

 ところが、このウェストコットとシュプレンゲルの通信については、ウェストコットのねつ造であるとの説も根強い。実際共同設立者のメイザーズでさえ、後の教団内の権力争いの過程で、シュプレンゲルの書簡はウェストコットが書いたものだと述べたことがある。

 実際のところどうなのだろう。

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暗号文書 画像は「Wikipedia」より引用

 まずは暗号文書について見ていこう。

 この文書は本来、イギリスのオカルティスト、ケネス・マッケンジーが保有していたものとされ、マッケンジーの死後その友人フレッド・ホックリーが保管していたという。そのホックリーが1885年に死亡したとき、その所有文書の一部がウェストコットの友人アレキサンダー・ウッドフォードの手に渡り、1887年にウェストコットからウッドフォードに託されたのだ。

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アレクサンダー・ウッドフォード 画像は「Wikipedia」より引用

 つまり暗号文書それ自体については来歴がかなりはっきりしており、実在したことはまちがいないようだ。

 次に、ドイツの魔術結社についてはどうか。

 実は、ゴールデン・ドーンはテンプルと呼ぶいくつかの団員集団から構成されているのだが、最初に設立されたテンプル、イシス・ウラニア・テンプルは、第三テンプルという位置づけであった。というのは、シュプレンゲルの属する団体が第一テンプルであり、ゴールデン・ドーンより以前にケネス・マッケンジーが同じようにドイツの結社の許可を得て魔術結社を設立していたという経緯があるからだ。

 そしてウェストコットは、このドイツの魔術結社の名に言及したことがあるのだ。彼によればその名は「LLL」であり、この団体こそ第一テンプルにして、アンナ・シュプレンゲルが所属していたものだという。実際ウェストコットが暗号文書を入手した頃、ドイツに「LLL」という団体が存在したことが明らかになっている。

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ウイリアム・ウイン・ウェストコット 画像は「Wikipedia」より引用

 では、この「LLL」とは、いったいどういう組織だったのだろうか。

 「LLL」とは、「Licht, Liebe, Leben」つまりドイツ語で「光、生命、愛」の略であり、19世紀末に実際に活動していたことが確認されている。設立したのはドイツの神秘主義者ヨハン・ロイトベッヒャーであった。

 ロイトベッヒャーは1801年に生まれ、生涯プライベートの哲学教師として過ごした。1838年、彼はエルランゲンにあるフリーメイソンのロッジに入会している。

 1857年になると、フリーメイソンは古代エジプトやユダヤ教の神秘思想を受け継ぐ団体であるという内容の『エッセネ派、神学者とフリーメイソンの素描』なる著書も著している。

 そして1864年に「LLL」を設立するのだが、これは彼が求めた古代の秘教、古代エジプトやキリスト教以前の異端宗教、ユダヤ・キリスト教神秘思想を包含した団体であったという。そしてゴールデン・ドーンもまた、「LLL」に習ったのか、カバラなどのユダヤ神秘思想、古代エジプトの秘儀などを取り入れている。さらにゴールデン・ドーンが採用したネオファイトからイプシシマスに至る11の位階も、ドイツの魔術結社、つまり「LLL」にならったものと言われている。

 1875年、ロイトベッヒャーは死去したが、団員の一部はその後も活動を続けており、ウェストコットがこの団体と接触したことは十分ありうるだろう。

 最後に、アンナ・シュプレンゲルについてはどうだろう。果たして彼女は、この団体に所属していたのだろうか。

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ルドルフ・シュタイナー 画像は「Wikipedia」より引用

 残念ながら、アンナ・シュプレンゲルという女性が「LLL」に属していたかどうかは、未だに不明である。

 ゴールデン・ドーンが内紛から分裂した後、自ら「ステラ・マテューティナ(暁の星)」という団体を率いたロバート・フェルキンなどは、ドイツを訪問中にルドルフ・シュタイナーと会見し、その弟子のひとりにアンナ・シュプレンゲルという女性がいることを発見しているが、ウェストコットによれば、アンナ・シュプレンゲルは1891年に死亡しているという。つまり、フェルキンが見つけた女性はウェストコットが接触した人物と同一とは思えないのだ。

 なおシュタイナーについては、やはりドイツの魔術結社オルド・テンプリ・オリエンティスとの関係が指摘されているが、「LLL」との関係はやはり不明である。こうした点については、今後とも調査を続けていきたい。

 

※当記事は2020年の記事を再編集して掲載しています。


TOCANA編集部

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