徐々に狂気に堕ちてゆく… 現実に起きた灯台の恐怖! 死体と共に暮らすことを余儀なくされた灯台守の物語

隔絶された孤島の灯台で仲の悪い灯台守が二人きりで過ごすとどうなるのか――。1801年、英ウェールズの孤島の灯台で起きた悲劇は、狂気と死をもたらし、海事法を変える影響をもたらした。
■孤島の灯台で“ツーオペ”が招いた悲劇
200年以上前の1801年に起きた「スモールズ灯台の悲劇」として知られるこの事件は、イギリス海事史上最も悲惨なエピソードの一つであり、灯台政策の永久的な変化につながるものになった。
1775年に建設されたスモールズ灯台(Smalls Lighthouse)は、英ウェールズのペンブルックシャーのセント・デイヴィッズ半島から西に約30キロの、アイリッシュ海の激しい波にさらされる岩だらけの小島に建っている。
スモールズ灯台への任務に就く灯台守の生活は孤独で鬱屈としたものであった。当時、灯台作業員は通常二人で構成され、長期間にわたって完全に孤立した状態で過ごすことも珍しくなかった。彼らの唯一の役割は、夜間は灯台を灯し続け、昼間は天候に関わらず灯台を維持することであった。
1801年、この灯台にはトーマス・ハウエルとトーマス・グリフィスという二人の男が駐在していた。仲の悪い二人は口論が絶えなかったが、ある日、グリフィスは突発的な心臓発作で病に倒れた。仲は悪くとも病気となれば話は別で、ハウエルは同僚を救おうと通りかかった船が気づいてくれるよう遭難信号を発信した。当時は無線機などなく、残念ながら旗による単純な信号はこのような辺鄙な場所ではほとんど役に立たなかった。
嵐が数週間にわたって灯台を襲い、付近の船の通行が不可能になった。グリフィスの容態は悪化し、長い苦しみの末、ついに彼は亡くなった。
突然、一人ぼっちになったという現実に直面したハウエルは、恐ろしいジレンマに陥った。二人は仲が悪かったため、もし遺体を海に捨てたら、将来捜査で殺人容疑をかけられるのではないかと彼は恐れ、助けが来るまで遺体を保管するしかなかった。
当初、ハウエルはグリフィスの遺体を居住区の中の物置小屋に保管していた。しかし遺体の腐敗臭はすぐに耐え難いものになった。
元樽職人だったハウエルは、小屋の一部を解体し、板材で間に合わせの棺を作り、グリフィスの遺体を中に入れ、蓋をしっかり閉め、灯台の外側の棚まで運び出し、しっかりとロープで固定した。
数週間後、猛烈な風が棺を破壊し、板は海に吹き飛ばされ、遺体は柵の手すりに縛り付けられたまま、風雨にさらされたままになった。
この時、この事件は最も忘れがたい、そして不気味なイメージを帯びることになった。ある時の突風でグリフィスの片腕が煽られ、それ以降、遺体は風が吹くたびにこちらに向かって手を振っているか、あるいは不気味に手招きしているかのように見えたのだ。ハウエルは小屋の中からその姿を眺めていたのだが、それは現在の悲惨な境遇を常に、そして忘れがたい形で記憶に刻む光景であった。
数日後には数隻の船が灯台から見える範囲を通過したが、天候は荒れすぎて上陸を試みるにはまだ危険過ぎた。
近くを通過する船の乗組員たちは夜になっても灯台がまだ灯っているのを確認できたが、これはひとえにハウエルの責任感の証であり、日中には時折、船から灯台の屋外の人影が視認できた。しかし遠くからでは何が起こっているのか分からず、信号にも緊迫感は感じられず、彼らはそのまま通過し航海を続けたのだった。
ハウエルは、ミルフォード・ヘイブンからの船がスモールズ島に着岸するまで、約4カ月間、亡くなった同僚と一緒に暮らしていたと考えられている。
救助隊が到着したとき、グリフィスの遺体は依然として柵に縛り付けられており、ハウエルは肉体的にも精神的にもすっかり変貌していた。彼の友人たちは救出された彼を見て見知らぬ人物であると主張したほどだった。髪は若くして白髪になり、顔はやつれ、この災難で完全に打ちのめされたように見えた。

「スモールズ灯台の悲劇」は海事界に衝撃を与え、孤立した灯台にわずか二人の灯台守しか配置しないことの危険性に警鐘を鳴らした。これを受けて灯台管理当局は方針を転換し、すべての灯台に少なくとも三人の灯台守を配置することを義務付けることになった。この規則は、20世紀後半にイギリスの灯台が自動化されるまで、ほぼ2世紀にわたって施行された。
二人きりの状況は極限状態になるほどリスクが高まるのかもしれない。仕事でもプライベートでも、心から信頼できない人物と二人きりで“ツーオペ”することの危険性を気に留めておいたほうがよいのだろう。

参考:「Mirror」ほか
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