30秒で人体を蝕む“地球上で最も危険な物体”「ゾウの足」

画像は「YouTube」より

 チェルノブイリ原発事故で出現した地球上で最も危険な物体とは――。“ゾウの足”と呼ばれる放射性物質の塊は近づいた人間の体調をわずか30秒で悪化させるという。

■壊滅的原発事故で出現した“ゾウの足”

 1986年4月28日、ウクライナのチェルノブイリ(チョルノービリ)原子力発電所の原子炉4号機が壊滅的な爆発を起こし、放射性核種の5%が環境に放出され、近隣地域から約35万人が避難を余儀なくされた。かつては賑わっていたこの地域はほぼ完全に廃墟と化し、その周囲は今日に至るまで実質的に無人のままとなっている。

 大半の住民が被災地から避難する中、放射線専門家アルトゥール・コルネエフ氏をはじめとする専門家によるチームが結成され危機管理のために動員された。

 当時65歳のコルネエフ氏は、3年間にわたって原発敷地内から放射性物質を除去する作業に従事した。彼の主な任務は、燃料貯蔵庫の位置を特定し、放射線レベルを測定して、他の作業員を過度の被曝から守ることだった。

 壊滅した原子力発電所の内部には、恐ろしい秘密が隠されていた。約200トンのウランとその放射性副産物が敷地内に残っていたのだ。この物質は非常に高い熱を発生させ、コンクリートやその他の建築資材を溶かした。そして、それが冷えると固まった溶岩に似た物質が形成され、その奇妙な形状から「ゾウの足」と呼ばれるようになった。

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「ゾウの足」の致死性は科学的分析によって明らかになった。米誌『Nautilus(ノーチラス)』によれば、わずか30秒の被爆でもめまいや疲労感を引き起こす可能性があるという。こうした危険にもかかわらず、コルネエフ氏は作業員らが清掃作業中に放射性物質を移動させるのにシャベルやブーツといった簡単な道具を使うことが多かったと後に明らかにしている。

「道を切り開くために、利用できるものは何でも使わなければならなかった」とコルネエフ氏は、危険物質に対処するために用いられた実践的なアプローチについて説明した。

 危険な放射線の代償はコルネエフ氏にとって大き過ぎるものとなった。彼は長期にわたる放射線被曝により白内障やその他の健康問題を発症し、その後まもなく現場への入場を永久に禁止された。

 コルネエフ氏の専門知識は当面の清掃作業を超えてなお貴重であることが証明され、原子炉の残骸を収めた石棺から再び大規模な放射性物質が漏れる危険性について西側諸国の科学者に警告した最初の専門家の一人となった。

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 彼らの警告は7カ国が原子炉4号機の安全性を大幅に向上させるために資金提供することを約束した1995年の合意に貢献し、この取り組みにより残りのチェルノブイリ原子炉は閉鎖され、最後の原子炉は2000年に閉鎖されたのである。

 チェルノブイリ周辺地域は依然として立ち入り禁止区域となっており、継続的な放射線リスクのため立ち入りが厳しく制限されている。残留放射性物質によるさらなる環境影響を防ぐために、この施設では継続的な監視とメンテナンスが必要である。

 チェルノブイリ原発事故の“負の遺産”としてはほかにもウクライナ・プリピャチの森の中で2010年にクレーン車のアームの先端部分“チェルノブイリの爪”が発見されている。人類文明は残念ながらまだ原子力発電から脱却できていないが、そのリスクについてさらに深い理解が求められていることは言うまでもない。

参考:「Misterios do Mundo」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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