元国防総省職員が“UFO「母船」の高解像度写真”を公開するも真偽に疑問符、揺らぐ信憑性

画像は「Daily Mail Online」より

 2024年10月、元国防総省職員ルイス・エリゾンド氏が、UFOの「母船」とされる画像を公開し、大きな波紋を呼んでいる。センセーショナルな発表の一方で、その信憑性を巡り、懐疑的な意見や批判が噴出。UFOコミュニティ内外を巻き込む騒動へと発展している。一体何が起こっているのか―――。

イベントで公開された「衝撃写真」

 事の発端は、ペンシルベニア州フィラデルフィアで開催された有料UFOイベント。エリゾンド氏は、聴衆を前に「舞台裏ではもっと多くのことが起きている」と語りかけ、一枚の写真を提示した。それは、ルーマニアで2022年に撮影されたという、光り輝く円盤状の物体。エリゾンド氏はこの物体を「空に浮かぶ巨大なミニ都市」と表現し、1977年の映画『未知との遭遇』に登場する母船のようだと述べた。まさに衝撃的な発表であり、会場は興奮に包まれた。

画像は「Daily Mail Online」より

しかし…すぐに露呈した矛盾点

 しかし、この興奮は長くは続かなかった。公開された写真は、インターネット上の精鋭たちによってすぐに検証され、その信憑性に疑問符が付けられたのだ。彼らが指摘したのは、写真の出所。エリゾンド氏は米国大使館が撮影したと主張したが、実際にはFacebookグループ「Mysterious Ancient Discoveries」への投稿画像と酷似していることが判明した。さらに、画像分析の結果、ルーマニアのアラド火力発電所近くの建物から撮影された可能性が高いことが示唆された。雲を突き抜けるかのように見える光線も、窓ガラスに反射した屋内のシャンデリアの光である可能性が高いと指摘されている。米国大使館はアラドから数百キロ離れたブカレストに位置しており、エリゾンド氏の説明とは矛盾する点が多い。

エリゾンド氏への批判の嵐

 この矛盾は、UFOコミュニティ内外からエリゾンド氏への批判の嵐を巻き起こした。UFO懐疑派は、彼の主張の杜撰さを指摘し、嘲笑の的に。一方、UFO信奉者からも、エリゾンド氏の行動は金儲け目的であり、真摯なUFO研究の妨げになるとの批判が噴出。RedditのUFOフォーラムでは、「彼は私達を金儲けの道具にしている」「重要な議論から注意をそらしている」といった辛辣なコメントが多数寄せられた。エリゾンド氏は後に「政府の友人」から提供された写真だと釈明したが、火に油を注ぐ結果となった。

画像は「Daily Mail Online」より

過去の言動も信憑性を疑わせる材料に

 エリゾンド氏の信憑性を疑わせる材料は、今回の写真に限ったことではない。空軍退役軍曹マクガワン氏は、エリゾンド氏が過去にも虚偽の情報や、機密扱いを偽った動画を見せていたと証言している。マクガワン氏自身、中東でUFO遭遇を経験しており、2020年のドキュメンタリーシリーズ『Unidentified』(エリゾンド氏も出演)でその体験を語っている。しかし、彼はエリゾンド氏によって利用されたと感じており、今回の写真公開騒動も同様のパターンだと指摘している。

 マクガワン氏によれば、エリゾンド氏は彼に「ソ連の探査機が火星付近で撮影した極秘映像」を見せてきたという。しかし、それは実際には数十年前から公開されている、ソ連のフォボス2探査機のUFO映像だった。エリゾンド氏は、複数のポッドキャスト司会者にも同様の行為を繰り返していたとされている。

米政府の懸念:母船UFOとドローン群

 今回の騒動は、UFOコミュニティ内部の対立を深めるだけでなく、米政府が抱えるUFO問題の複雑さを改めて浮き彫りにしたと言えるだろう。近年、情報公開法を通じて公開された文書から、米政府が「母船」UFOとドローン群の目撃情報に強い懸念を抱いていることが明らかになっている。2019年末には、ICBM基地周辺で多数のドローンが目撃され、大きな問題となった。これらの目撃情報は、国家安全保障上の脅威として捉えられており、真相解明が急がれている。

 エリゾンド氏の公開した写真の真偽は未だ不明だが、今回の騒動は、UFO現象を取り巻く情報環境の複雑さと、慎重な情報検証の必要性を改めて示すものとなった。真実はどこにあるのか、今後の調査と公式発表に注目が集まる。

参考:Daily Mail Online

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文=青山蒼

1987年生まれ。都市伝説マニア。

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