「氷山の女王」世界最大の氷山A23a、南大西洋の孤島に接近…生態系に危機?専門家が警鐘

画像はUnsplashAnnie Sprattより

 南大西洋に浮かぶ英国領のサウスジョージア島とサウスサンドウィッチ諸島に、世界最大の氷山「A23a」が接近している。この氷山の衝突により、多数のペンギンやアザラシなどの生態系が深刻な影響を受ける可能性があると専門家は警鐘を鳴らしている。

巨大な氷山の脅威

 A23aは、アメリカ・ロードアイランド州(約4000平方km)ほどの大きさを誇る巨大な氷山で、現在、サウスジョージア島から約290キロメートルの地点に位置している。この氷山が島に衝突すれば、ペンギンやアザラシの群れ、その他の野生動物の生息地に壊滅的な被害をもたらす可能性があるという。

「氷山は本質的に危険だ」と、サウスジョージア島で政府船に乗務するサイモン・ウォレス船長はBBCニュースに語った。「完全に島を回避してくれるなら、非常に安心できるのだが」と続けた。

 A23aは「氷山の女王」と呼ばれるほどの規模を持つ。米国国家氷センター(U.S. National Ice Center, NIC)によると、1986年に南極のフィルヒナー棚氷から分離したが、長らく海底に固定されていた。その後、2020年にようやく北上を開始し、2024年12月にはサウスオークニー諸島付近で再び動きを見せた。

NASA地球観測衛星によって測定されたA23aの進路 Public Domain, Link

予測不可能な氷山の動き

 氷山の動きは予測が難しい。水温の上昇による融解や側面からの大規模な崩落が絶えず発生するためだ。現在の予測では、A23aは海流に押されて「氷山の墓場」とも称されるドレーク海峡に向かう見込みだ。この海域は氷山が融解しやすいが、サウスジョージア島とサウスサンドウィッチ諸島はその東端に位置しており、接近する氷山からの脅威を受けやすい。

「サウスジョージア島は『氷山の回廊』に位置しているため、漁業や野生動物への影響が予想される。しかし、これらは順応する力を持つ」と、サウスジョージア政府の海洋生態学者マーク・ベルチア氏は述べた。

 過去にも類似の事例が記録されている。2004年には、巨大氷山A38が島の大陸棚に衝突し、ペンギンやアザラシの餌場を封鎖。多くのひなや子供が餓死する惨状を招いた。

警戒を続ける船員たち

 A23aは日々崩壊し、小さな断片が生じる可能性がある。これらの破片が島を完全に回避する可能性もあるが、危険性が完全に排除されたわけではない。ウォレス船長と乗組員たちは夜間もサーチライトを用いて氷山の動きを監視している。「氷山は突然現れることがある。警戒を怠ることはできない」と語った。

 南極から遠く離れた島々に住む野生動物たちは、地球規模の変化の影響を直接受ける存在である。南極の巨大氷山が島の生命を脅かす様子は、地球規模の環境問題の一端を示しているだろう。私たちが自然環境とどのように向き合うべきか、改めて考える契機なのかもしれない。

参考:Live Science、ほか

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