過去に情報を送れる時代が来る!? 映画『インターステラー』を現実にする量子物理学の胸アツ理論

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 時間旅行といえば、タイムマシンに乗って過去や未来へ飛び込む、完全にSFの領域の話だ——と思っていたら、どうやらそうでもないらしい。科学者たちが、量子物理学の法則を使って「過去にメッセージを送る」方法を理論的に解明した。しかも、そのメカニズムはクリストファー・ノーラン監督のSF超大作『インターステラー』の有名なシーンと驚くほど一致しているという。

「時間旅行を禁じる法則は存在しない」

 まず前提として押さえておきたいのは、物理学の法則は時間旅行を「不可能」とは言っていない、という点だ。アインシュタインの一般相対性理論によれば、あらゆる物体は空間と時間が織りなす「時空の布」の上を、決まったパスに沿って移動している。

 その中に「閉じた時間的曲線(CTC:Closed Time-like Curve)」と呼ばれるパスが理論上存在する。これは、未来へ向かって進みながら過去へループし、出発点に戻ってくるという時空の構造だ。ちょうどワームホールのような形をしたこのループは、物理法則上は許容されている。

 問題はスケールだ。現実の宇宙でCTCを作るには、時空を文字通り「ねじ曲げる」必要があり、そのためには無限大に近いエネルギーが必要になる。つまり、人間がタイムマシンを建造して恐竜時代に飛び込むのは、今のところ夢物語のままだ。

量子の世界では「過去への通信」が起きている可能性

 ところが話は変わる。ミクロ中のミクロ、量子スケールの世界では、CTCに似た構造が自然に生じる可能性があるのだ。

 量子物理学には「量子もつれ(Quantum Entanglement)」という不思議な現象がある。2つの粒子が一度でも相互作用すると、その後どれだけ離れていても、片方に起きた変化がもう一方に瞬時に影響を与える。アインシュタインが「不気味な遠隔作用」と呼んで生涯にわたって納得しなかった現象だ。

 この「もつれ」を説明する方法のひとつが、「片方の粒子が過去へ向かって情報を送っている」というモデルだ。光速を超える通信でも、巨大なシステムを仮定するわけでもなく、粒子が過去から受け取ったメッセージに基づいて反応しているというわけである。

 2010年、MITの量子物理学者セス・ロイド教授は、もつれた粒子を使ってCTCを「模倣」する手法を実際に編み出した。彼はこれを「光子を数ナノ秒だけ過去に送り返し、かつての自分を殺そうとさせるようなもの」と表現している。なんともSFらしい言い回しだが、それは冗談交じりに語れるほどに理論が洗練されている証拠でもある。

「インターステラー」の父と娘のシーンが、実はリアルだった

 ここで登場するのが『インターステラー』だ。映画の中で、マシュー・マコノヒー演じる宇宙飛行士は、娘の部屋の時計の針を動かすことで、過去にいる娘へとメッセージを送る。未来にいる父親が、過去の娘がそのメッセージをどう解読するかを「記憶」として参照しながら、最適な形でメッセージを組み立てるのだ。

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 コーネル大学の研究者カイユアン・ジー博士は科学誌「ニュー・サイエンティスト」に対してこう述べている。「父親は、娘が自分の未来のメッセージをどうデコードするかを記憶しています。だからこそ、どのようにメッセージをエンコードすれば最善かを自分に教えることができるのです。」

 この「因果ループ」こそ、実際の時間旅行型通信が機能する仕組みに近いと研究チームは主張する。ロイド教授らが『フィジカル・レビュー・レターズ』誌に受理された論文でも、同様の描写がなされている。「未来にいる父親は、娘がメッセージをデコードする場面を含む過去の記憶を参照できる。したがって、通信の効率を最大化するため、デコード方法を参考にしてメッセージをエンコードすることは自然なことだ」と。

 さらに興味深いのは、ノイズだらけの不安定な回線であっても、過去への時間旅行的メッセージは通常の通信よりも明瞭に届く可能性があるという点だ。もつれた粒子を介したCTCによる通信は、雑音に強いという特性があるのだという。

実験への道と、その先にあるもの

 ロイド教授は「実際の物理的なCTCはまだ誰も作っていないし、製造が非常に困難だという理由もある」としつつも、この新理論を量子レベルの実験に応用するのはそれほど難しくないだろうとも述べている。

 実験が実現すれば、「ノイズの多いチャネルを通じた情報伝達」という情報理論の根本的な課題を解決する糸口になるかもしれない。現実の通信技術の改善にも応用できる可能性を持つ研究だ。

 タイムマシンで過去に戻れる日はまだ遠い。だが、量子の世界では「過去との対話」がすでに理論の外縁に差し掛かっている。SFと物理学の境界線が、また少し曖昧になった気がする。

参考:Daily Mail、ほか

TOCANA編集部

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