「テレポート」がついに現実に? 量子情報の転送実験成功がもたらす未来

映画『チャーリーとチョコレート工場』のように、人や物を一瞬で遠くへ転送する「テレポート」。それはSFの世界の話だと思われてきたが、科学者たちはその夢へ向けて確実な一歩を踏み出した。ただし、転送されたのは人間ではなく、「量子情報」である。
ドイツのシュトゥットガルト大学の研究チームは、異なる場所にある光子の間で量子情報をテレポートさせる実験に成功し、その成果を学術誌『Nature Communications』に発表した。この技術は、私たちの生活を根本から変える可能性を秘めている。
「量子の絡み合い」がカギ
量子テレポーテーションを実現させたのは、「量子エンタングルメント(量子もつれ)」と呼ばれる現象だ。これを理解するには、ファストフードのドライブスルーを想像すると分かりやすい。
あなたが友人と一緒にドライブスルーへ行き、チキンサンドとチーズバーガーを1つずつ注文したとしよう。店員から中身の見えない紙袋をそれぞれ手渡されたが、どちらが入っているかは分からない。
このとき、あなたの袋の中身は「チキンサンドでもあり、チーズバーガーでもある」という不確定な状態にある。しかし、あなたが袋を開けて「チキンサンドだ!」と確認したその瞬間、友人の袋の中身が「チーズバーガー」であることが即座に確定する。
このように、離れていても運命を共有し、片方の状態が決まるともう片方も瞬時に決まる関係を「量子もつれ」と呼ぶ。研究チームは、特殊な半導体光源を使って全く同じ性質を持つ光子のペアを作り出し、この原理を利用して偏光状態(情報)を一方から他方へと転送することに成功したのだ。

「ハッキング不可能」な未来へ
今回の成功は、人間をテレポートさせる技術への直接的な一歩ではないが、次世代の通信技術「量子インターネット」の実現に向けた大きな飛躍である。
量子インターネットでは、情報は量子もつれを利用して送られるため、盗聴やハッキングが理論上不可能になる。なぜなら、量子情報は観測された瞬間に状態が変化してしまい、盗み見れば必ず痕跡が残るからだ。これにより、クレジットカード情報や個人データが絶対的に守られる「ハッキング不可能な世界」が実現するかもしれない。
まだ「ソファから南国へ」とはいかない
もちろん、課題も残されている。今回の実験で光子が移動した距離は約10メートル程度であり、実用化には長距離化が必須だ。また、転送の成功率も約70%にとどまっている。
研究を主導したピーター・ミヒラー博士は、「より長距離の通信に向けた重要なステップだ」と語る。私たちが自宅のソファから南国のビーチへ瞬時に移動できる日はまだ遠いが、情報の安全性においては、SFのような未来がすぐそこまで来ているのかもしれない。

参考:Popular Mechanics、ほか
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