死の直前まで「絶対に教えない」と言い張った美容師 —— 核爆弾75発に耐える奇跡の素材「スターライト」の製法は永遠に失われたのか

生卵に薄く塗った謎の塗料が、1200度の炎で何分炙られても中身を守り抜く——。巨額の資金を積んだ航空宇宙企業すら手に入れられなかった「夢の断熱素材」が、かつて確かに存在したという。発明したのは大学の研究者でも軍の技術者でもなく、イングランドで店を構える一介の美容師だった。彼は製法を生涯誰にも明かさず、墓まで持ち去った。素材の名はスターライト——現代科学最大級の謎のひとつである。
生卵を1200度で炙っても、黄身は常温のままだった
伝説の始まりは1990年3月8日にさかのぼる。この日、英国の科学技術番組『トゥモローズ・ワールド』が一本の実験映像を放送した。司会者がブロートーチ(ガスやガソリンを燃料として強力な炎を噴出する工具)を手に、ある素材を塗った生卵をひたすら炙り続けるという、一見地味な内容である。
その炎は最高で1200度に達していた。数分間も熱せられたにもかかわらず、司会者は素手で卵をつかみ、割ってみせた。中の黄身は室温のまま、まったく変質していなかったのだ。世界中の科学者や企業が、この映像に釘付けになった。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの材料科学者マーク・ミオドヴニク氏は後年、ただ塗っただけの素材がこれほどの効果を発揮した驚きが、いまも記憶に焼きついていると振り返っている。放送直後から航空宇宙業界が殺到し、スペースシャトルの耐熱シールド改良に使えないかとNASAまでもが関心を寄せたとも伝えられている。
美容師にして独学の化学者——マンチェスターの惨事が生んだ執念
スターライトを生み出したのは、モーリス・ウォードという男だった。本業は美容師でありながら、独学で化学に没頭したアマチュア発明家である。
彼が耐熱素材の研究にのめり込んだきっかけは、1985年のマンチェスター空港の航空機火災事故だったとされる。滑走路上で旅客機が炎上し、55人もの命が失われたこの惨事に衝撃を受けたウォードは、燃えない化合物の探求を始め、やがて1万度でも燃えることを拒む物質にたどり着いた——と伝えられている。ウォード自身の言葉として残るのは、スターライトが核爆発の熱にすら耐えるという主張だ。その回数は「75発分」と具体的に語られていた。ただし熱に耐えるという話で、爆発の衝撃波に耐えるわけではないという注釈つきだ。荒唐無稽にも聞こえるが、あの生卵の映像を見た者たちは、誰も簡単には笑い飛ばせなかった。
製法を握りしめたまま——男は墓まで秘密を持ち去った
これほどの素材なら、特許を取り企業と提携し巨万の富を築くのが普通だろう。だがウォードは、製法を誰にも一切渡そうとしなかった。
その徹底ぶりは尋常ではなかった。娘ニコラ・マクダーモット氏によれば、父は交渉相手を信用せず、しばしば心理的な駆け引きを仕掛けたという。作業場にはわざと本物ではない材料を置き、盗み見られても本当の成分にたどり着けないよう細工していたとされる。相手が情報を奪い、自分たちが発明したと主張するのではないか——その猜疑心が彼を頑なにさせていた。そしてこの極端な不信が悲劇を招く。スターライトは一度も実用化されないまま、2011年、ウォードは世を去った。製法は本人とともに、墓の中へ消えたかに見えた。

「カーボンの泡」が鍵か——色あせない謎の行方
スターライトの正体は今日まで分かっていない。ただ、その秘密は加熱で膨張する「カーボンフォーム(炭素の泡)」を生む性質にあるのではないか、と推測されている。2018年、この謎に挑んだ動画クリエイターのベン・キューシック氏は、同種の泡を生む「ファラオの蛇」という花火からヒントを得て再現に挑んだ。加熱されると炭素へ分解する原料を無数の気泡で満たし、その層を空気の壁として熱源と中身を隔てるのが鍵だという。氏は小麦粉や砂糖、重曹で独自版を作り上げたが、ウォードが使ったのはより複雑な素材だったと見られている。
ウォードの死後、物語には続きがあった。米デラウェア州の企業サーマシールドが、彼の残したノートや実験器具一式の権利を取得し、製法の完成を目指していると報じられているのだ。一方で近年は、華々しい逸話の一部に検証の目も向けられている。NASAがホワイトサンズ・ミサイル実験場で試験した、あるいは英国の原子兵器研究所(AWE)が検証したという説については、真偽を疑問視する声も上がっている。
核爆弾75発分の熱に耐えた奇跡の素材だったのか、それとも一人の発明家が紡いだ壮大な伝説だったのか。真相はまだ闇の中にある。ただ確かなのは、誰もが欲しがり誰も手にできなかったこの素材が、四半世紀を経てもなお人々を惹きつけてやまないという事実だ。スターライトが再び姿を現す日が来るのか——その答えを知るのは、まだ先のことになりそうだ。
参考:Popular Mechanics、ほか
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2024.10.02 20:00心霊死の直前まで「絶対に教えない」と言い張った美容師 —— 核爆弾75発に耐える奇跡の素材「スターライト」の製法は永遠に失われたのかのページです。NASA、断熱材などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで


