【最新研究】サイコパス気質は細菌で決まる? 200人のサンプルから特定した4種の細菌と人格形成の新たな可能性

人の性格は脳がつくる。長らくそう考えられてきた常識に、横合いから食い込むような研究結果が発表された。
ポルトガル・ポルト大学の研究チームが成人200人の血液、唾液、便を分析したところ、サイコパス的な傾向の強さと特定の細菌の量とのあいだに、統計的な関連が浮かび上がったというのだ。
冷淡さや衝動性といった心の傾きが、腸や口の中に住む微生物と結びついている——にわかには信じがたいその中身とは。
200人分の便・唾液・血液から浮かんだ「4種の細菌」
この研究は、精神医学分野の学術誌「Translational Psychiatry」に2026年8月11日付で早期公開された。生物医学研究者のカロライナ・コスタ氏らのチームによるものだ。
参加したのは健常な成人200人。彼らは「自己申告式サイコパシー尺度・短縮版(SRP-SF)」と呼ばれる質問紙に回答したうえで、血液、唾液、便のサンプルを提供した。
ここで押さえておきたいのは、対象が「サイコパシーと診断された人物」ではないという点だ。冷淡さ、衝動性、他者への共感の薄さといった特性は誰しも程度の差を持っている。この研究は、その濃淡と体内の細菌分布を突き合わせたものになる。
分析の結果、サイコパス傾向のスコアが高い人ほど多く検出された細菌が3種類あった。アリソネラ属、プレボテラ属、そしてクロアシバチルス・エヴリエンシスという種だ。
一方、スコアが高い人ほど少なかった細菌も1種類ある。口腔内に生息するトレポネーマ・ヴィンセンティだ。関連が見つかったのは腸内だけでなく、口の中にまで及んでいたことになる。
微生物はどうやって「心」に届くのか
研究チームは、今回見つかった関連について、脳の働きだけで説明してきた従来のモデルの外側に、測定可能な生物学的痕跡が存在する可能性を示すものだとの見解を示している。
では、どういう仕組みで微生物が人格に触れうるのか。チームが可能性として挙げているのは、炎症、神経伝達物質の産生、そして微生物が神経系に及ぼす作用という3つの経路だ。ただし、いずれも現時点では推測の域を出ないと明言されている。
背景にあるのは、近年注目を集めてきた「腸脳相関」という考え方である。腸と脳は迷走神経や免疫系、ホルモンを介して双方向にやりとりしており、体内のセロトニンの大半が腸で作られていることも知られている。腸内環境と気分や行動の関連を探る研究は、ここ十数年で急速に増えてきた。
今回名前が挙がった細菌にも、それぞれ性格がある。アリソネラ属はヒスタミンを産生する細菌として知られ、プレボテラ属は食生活によって大きく増減し、炎症との関わりが議論されてきた属だ。
とはいえ、「この菌がいるから冷淡になる」といった単純な図式が成り立つわけではない。細菌叢は数百種が複雑に絡み合う生態系であり、一つの属の増減だけを切り出して意味づけるのは危うい。

「相関」と「因果」のあいだにある深い溝
研究チーム自身が最も強く念を押しているのが、この点だ。今回示されたのはあくまで相関であり、細菌がサイコパス的傾向を引き起こしていることは一切証明されていない。
順序が逆である可能性も十分にある。衝動性の高さは食習慣、飲酒、睡眠、ストレスへの向き合い方を変える。それらは腸内環境を確実に左右する要素だ。つまり「性格が細菌の顔ぶれを変えた」という説明も、同じくらいの説得力を持つ。
さらに重要なのは、この論文が査読を経る前の早期公開版だという事実である。専門家による検証の過程で、結論が修正される可能性も、そもそも成立しなくなる可能性も残されている。200人という規模も、人類全体に当てはめるには心もとない。
それでも、この研究が投げかける問いは軽くない。私たちが「その人の人格」と呼んでいるものの一端が、意思とも脳とも別の場所——腸や口内に住みつく数十兆の微生物との関係の中に置かれているのだとしたら……。
鏡の前に立っているのは、本当に「自分」ひとりなのだろうか。
参考:Science Alert、ほか
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