ピラミッド地下の円筒形構造物は「記録の殿堂」なのか？

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　エジプト・ギザのスフィンクスの下にあるといわれている古代の図書館「記録の殿堂」は、実はカフラー王のピラミッドの地下にあったのか――。最新の探査技術によってカフラー王のピラミッドの地下で特定された8つの垂直の円筒形の構造物は「記録の殿堂」なのだろうか。

■ピラミッド地下の円筒形構造物は「記録の殿堂」なのか？

　3月21日付けのトカナの記事で、ギザのカフラー王のピラミッド直下に、前代未聞の円筒形構造が発見されたというニュースをお届けしたが、この地下構造物は伝説的霊能者、エドガー・ケイシー（1877-1945）が言及していた「記録の殿堂（Hall of Records）」なのではないかとの指摘が注目を集めているようだ。

「記録の殿堂」とは古代文明に関する失われた知恵と知識が大量に保管されている図書館である。

　イタリア・ピサ大学のコラド・マランガ教授率いる研究チームと、英ストラスクライド大学でレーダー・リモートセンシングの研究に携わるフィリッポ・ビオンディ氏らが最新技術を駆使し、カフラー王のピラミッドの地下の詳細な3D画像を再構築したことで明らかになった8つの垂直の円筒形の構造物は、ケイシーが話していた「記録の殿堂」なのだろうか。

　英リバプール大学エジプト学講師のローランド・エンマーチ博士は「Daily Mail」オンライン版に対しこの概念は「素晴らしいSF小説にはなるが、科学的事実ではないことは間違いない」と語っている。

「信頼できる証拠のバランスが、そのようなものが存在する、あるいはかつて存在していたことを示している場合、私は何かが存在すると信じるだろう。ギザ台地の下に記録の殿堂を建てるというアイデアはそうではありません」 （エンマーチ博士）

　エンマーチ博士のように、ほとんどの科学者はそれが架空のものであることに同意している。

　ツタンカーメンの墓に関する新たな研究を発表したばかりのエール大学のエジプト学者ニコラス・ブラウン博士は「記録の殿堂」など「存在しない」と語った。

「古代エジプトに記録の殿堂があったという証拠はまったくなく、それがアトランティスと関連しているという説もあるが、これも真実であるという確固たる証拠はありません。私は確かな事実とデータに基づいて仕事をしているので、こうした疑似科学的な主張には通常うんざりしています」（ブラウン博士）

　豪シドニー大学のエジプト学者メラニー・ピトキン博士も、記録の殿堂は存在しないと述べ、カフラー王のピラミッドの下で発見されたとされる構造物を否定した。

「そのような主張を裏付ける古代の考古学的、芸術的、文学的証拠は存在しません」（ピトキン博士）

　さらにグラスゴー大学の古代史講師ジェーン・ドレイコット博士もこの神話には全く「根拠がない」と語っている。

　そしてそもそも「記録の殿堂」の話以前に、地下に巨大な円筒があるというマランガ教授らの主張そのものが信用するに値しないという。

　考古学者でエジプトの元観光・考古大臣のザヒ・ハワス博士は、これを「アマチュア集団」による「フェイクニュース」と評する。

「この情報はすべて完全に間違っており、科学的根拠は全くない。観光古代省は、いかなる個人や団体にも第2ピラミッドの内外での作業を許可しなかった」（ハワス博士）

　そしてピラミッド内部でレーダー機器は使用されていないのだと指摘する。

「必要な専門知識と資格を持つ人々によって検証されるまで、これは疑似科学であり陰謀論です」（ハワス博士）

　多くの研究者、専門家によって否定されている「記録の殿堂」と円筒形の構造物だが、物理的に一帯の地下を掘削することは許されそうもないことから、この先も白黒はっきりさせるのは難しいのかもしれない。ともあれ今後この件が新たな展開を見せることがあるのか気に留めておきたい。

参考：「Daily Mail」ほか

文＝仲田しんじ

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