火星に古代文明の痕跡? NASA画像に浮かび上がる“謎の構造物”の正体とは

赤く乾いた不毛の大地……、多くの人が火星に対して抱くイメージだろう。しかし、その表面を注意深く観察すると、古代の異星文明が残したかもしれない痕跡が見えてくる…? そう主張するのは、火星研究グループ「シドニア研究所」の創設者であり、第一人者でもあるジョージ・J・ハース氏だ。彼は、NASAが撮影した火星表面の画像の中に、自然物とは考えにくい、明らかに人工的な構造物が多数存在すると確信している。
彼の新著『The Great Architects of Mars(火星の偉大なる建築家たち)』では、ピラミッド、鍵穴型の建造物、さらには巨大なオウムの地上絵まで、数十点に及ぶ驚くべき「証拠写真」が分析されている。
ハース氏によれば、これらはかつて壮大だった都市や巨大なピラミッド、地上絵などの名残かもしれないというのだ。彼が注目するのは「幾何学」。自然界だけでは説明できない幾何学的な特徴やパターンこそが、文明の存在を示すマーカーだと、彼は30年以上にわたるNASA画像の研究を通じて考えている。「岩と彫刻の違いを見分けるのに地質学者である必要はありません。幾何学的なものは分かるはずです」と、正式な美術教育を受けたハース氏は語る。
鍵穴、巨大オウム、ピラミッド群…これらは文明の証か、見間違いか?
ハース氏が「人工物」として挙げる構造物は多岐にわたるが、特に注目すべきものをいくつか見てみよう。
■鍵穴構造

2011年にNASAの火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)が撮影した、高地の「リビア・モンテス」地域にある奇妙な隆起。くさび形の構造と円形のドームが組み合わさり、巨大な鍵穴、あるいは感嘆符のようにも見える。ハース氏はこの幾何学的な対称性に着目し、日本の古墳(特に鍵穴型の前方後円墳)との類似性を指摘。自然の力だけでこのような形状が生まれる確率は極めて低いと主張する。

■オウムの地上絵


2002年にマーズ・グローバル・サーベイヤーが撮影した、巨大な衝突クレーター「アルギレ盆地」の画像に、研究者のウィルマー・ファウスト氏が奇妙な地形を発見。頭、目、くちばし、胴体、脚、そして羽を持つ翼…それは巨大なオウムの姿に見えたという。ハース氏はこの「パロットピア」とも呼ばれる地上絵について、「単なるシルエットではない。目、虹彩、まぶた、眉毛まで見て取れる。これは彫刻であり、芸術作品だ」と断言。5人の獣医師(鳥類専門家を含む)が、その解剖学的な正確さを確認したとも付け加えているが……、さすがにこれには無理があるような気もする。
■サガン・ピラミッド

1972年、マリナー9号が火星第2の火山地域「エリシウム」で捉えた、三角形の奇妙な構造物群。急峻な火山錐やクレーターが点在する中で、明らかに異質な三面ピラミッドが複数確認された。その平均的な高さは約975メートル、幅は約3000メートルにも及び、地球最大のピラミッドをも凌駕する。
かの有名な天文学者カール・セーガンもこのピラミッドに注目し、風や砂による浸食で形成された可能性を示唆しつつも、真相解明には近接観測が必要だと認めていた。ハース氏は、自然のピラミッド状地形は通常円錐形に近いこと、そして同程度の大きさの面を持つことは稀であると指摘。さらに、地球上では珍しい三面ピラミッドが、米国の秘密基地エリア51内の爆発物実験施設に存在することも挙げ、これらの火星ピラミッドが知的存在によって建造された可能性を排除しない。
■アトランティス複合体


火星南半球の「アトランティス・カオス」地域。通常、ブロック状の急峻なメサ(卓状台地)と深い谷が入り混じる地形とされるが、2019年、惑星SETI研究協会のグレッグ・オーム氏が、NASA画像の一部に「細胞状構造の密集したグリッド(格子)」の痕跡を発見。さらに独立研究者ジャベド・ラザ氏が詳細な分析を行い、線状の構造物が「巨大な都市のような複合体」の一部である可能性を指摘した。ハース氏によれば、規則的に配置された基礎、壊れた壁、塔の跡などは、地球上の古代都市遺跡(サウジアラビアのアル・ウラーなど)に酷似しているという。
■スターバースト構造


ESA(欧州宇宙機関)が撮影した「ネペンテス・メンサエ」地域の画像からハース氏が見つけ出した、奇妙な星形の隆起。「巨大なヒトデのように5本の腕が放射状に伸びている」形状から、彼はこれを「スターバースト」と名付けた。その形状は、16~17世紀のヨーロッパや、植民地時代・南北戦争時代のアメリカでよく見られた、角に三角形の稜堡(りょうほ)を持つ星形要塞に酷似していると指摘。特に、テネシー州にあったヘンリー砦との類似性は顕著だという。
しかし、これらの主張に対し、科学界の主流な見解は冷ややかだ。多くの場合、これは「パレイドリア」と呼ばれる心理現象の結果だと説明される。パレイドリアとは、無関係なものの中に規則性や意味のある形(特に顔など)を見出してしまう脳の働きのことだ。雲の形が動物に見えたり、パンの焦げ目が人の顔に見えたりする、あれである。リンカーン大学の心理学者ロビン・クレイマー氏は、「実際には存在しない顔を見てしまうことがある。これは脳の顔検出システムのエラーだ」と解説する。つまり、火星の岩や地形が、偶然にも我々が知っている形に似て見えているだけ、というわけだ。
真相は? 有人探査が解き明かす未来
ハース氏の主張が、単なるパレイドリアによる「見間違い」なのか、それとも本当に失われた古代火星文明の痕跡を示しているのか。それを確かめるためには、やはり現地での詳細な調査が不可欠となるだろう。
幸いなことに人類が火星に降り立つ日は、そう遠くない未来かもしれない。スペースX社CEOのイーロン・マスク氏は、2026年に最初の無人スターシップを火星に送り込み、2029年までには宇宙飛行士を送るという野心的な目標を掲げている。
ハース氏は、人類が火星に拠点を築いた暁には、これらの奇妙な構造物がどのように形成され、あるいは「建造」されたのかを解明する調査が始まることを期待している。「火星は、テクノロジーとあらゆる種類の情報の宝庫になるでしょう」と彼は語る。
果たして、火星の赤い大地の下には、どんな驚くべき秘密が眠っているのだろうか。ハース氏の提起する謎多き構造物の真相が、いつの日か有人探査によって解き明かされるのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
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2024.10.02 20:00心霊火星に古代文明の痕跡? NASA画像に浮かび上がる“謎の構造物”の正体とはのページです。ピラミッド、火星、前方後円墳、構造物などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで