天才たちが信じた神秘物質「エーテル」の正体とは？ 宇宙を満たす“第5の要素”なのか

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　古代および中世では宇宙領域を満たす神秘的な物質であると信じられていた「エーテル」をどう理解すればよいのか――。

■人類はエーテルをどう考えてきたのか

　人類の歴史において「エーテル（aether）」は神秘的な要素であり、光と光速、重力など、多くの自然現象を説明するために使用されてきた。

　かつてエーテルは宇宙の根源的な要素の一つであると信じられており、19世紀後半の一部の科学者たちはエーテルが宇宙全体に浸透し、真空中で光が伝わる媒体となると仮定していたが、しかしその後の実験でこうしたエーテルのメカニズムを証明することはできなかった。

　古代ギリシャ神話でエーテルは、人間が呼吸する空気と同様に、神々が呼吸して彼らの住む空間を満たす純粋なエッセンスとして言及されていた。

　古代ギリシャの哲学者、プラトン（紀元前427-347年）もその著作の中でエーテルについて言及しており、著書『ティマイオス』でプラトンがアトランティスの存在について言及している部分で空気について語り、「エーテルと呼ばれる最も透明な種類（の空気）がある」と説明している。

　さらにアリストテレス（紀元前384-322年）にとって、エーテルはいわゆる月上界（supralunar）を構成する物質であり、一方で月下界（sublunar realm）は土、水、空気、火という既知の4つの要素で構成されている。

　アリストテレスにとってエーテルは、より微妙で軽い要素であり、月下界の4つよりも質的に完全であり、4つの動きが直線的であるのに対し、エーテルの自然な動きは円を描くとされている。

　エーテルは古代ヒンドゥー教の哲学でも言及されている。

　インドでは、エーテルはアカシャとして知られており、サーンキヤ哲学では、空・風・火・水・地の五大元素（パンチャ・マハーブータ）が説かれており、それぞれが前のものより8倍微細であるとされている。

　サーンキヤ哲学はヒンドゥー哲学の六つのアースティカ学派の一つで、主に ヒンドゥー教のヨーガ学派と関連している。

　エーテルは古代中国にも広く普及し、仏教の基礎を形成している。

　中世にはエーテルという用語は、まさにアリストテレスが認めた5番目の物質要素であるという理由から、第5の要素と呼ばれるようになった。現代になって生まれたダークエネルギーやダークマターの概念もエーテルの影響があるのかもしれない。

　エーテルは重力とも深く関係しており、アイザック・ニュートン（1642-1727）の『自然哲学の数学的原理』（プリンキピア）でニュートンは光については粒子説を唱え、波動説と関連付けられていたエーテル説を否定したが、『光学』ではエーテルに否定的な考えを示さなかったため、エーテルを完全に否定していたわけではないという見方もあるようだ。

　交流電気方式の発明者として知られている発明家で電気技師のニコラ・テスラ（1856-1943）もエーテルについて言及している。

「すべての物質は、基本的な物質である光を放つエーテルから生じる」（ニコラ・テスラ）

　ダークエネルギーやダークマターの概念にも通じるエーテルの“復権”がこの先あり得るのだろうか。近い将来に科学界が“パラダイムシフト”に見舞われた時、エーテルが再び脚光を浴びても不思議ではないのだろう。

参考：「Ancient Code」ほか

文＝仲田しんじ

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