「おばあちゃん、乗って!」ロボットに貼られたメモが72歳の命を救った…ウクライナ前線、無人車両による救出劇

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画像は「X」より

遺体が転がる道を、杖をつきながら歩く老女

 ウクライナ東部の都市リマン近郊。銃弾の跡が残る道路の上を、一人の老女がゆっくりと歩いていた。年齢は72歳。両手に歩行用の杖をつき、砲弾の穴のあいだを縫うようにして進んでいた。

 その姿を空から捉えたのは、偵察ドローンだった。映像を受け取ったウクライナ軍第60独立機械化旅団の兵士たちは、すぐに状況を把握した。ここは戦闘が続く「グレーゾーン」、つまりロシア軍とウクライナ軍のどちらが支配しているとも言えない危険な地帯だ。あの老女を、このまま放置するわけにはいかない。

「おばあちゃん、乗って!」—ロボットに貼られた一枚のメモ

 旅団が救出に投入したのは、「ケルベロス」と呼ばれる無人地上車両(UGV)だ。遠隔操作で動くこのロボットを、そのままの姿で老女に近づけるわけにはいかない。突然機械が走ってきたら、驚かせてしまう。そこで兵士たちが取った行動が、なんとも人間らしかった。

 車体に毛布をかぶせ、手書きのメモを貼り付けた。書かれていたのはたったひと言、「バブーシャ(おばあちゃん)、乗って!」。

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画像は「X」より

 指令センターの映像には、操縦する兵士が老女の様子を見守りながら「息切れしてるのかな、大丈夫か」とつぶやく声が残っている。老女がよろめきながらも車体の後部によじ登ると、兵士たちの声が重なった。「そうそう、そのまま、よし!」

 別の兵士がすかさず言う。「脚の部分をズームして確認してくれ。アスファルトに引っかかってたら困る、キャタピラが壊れたら大変だ」。緊張感の中にも、妙なほど冷静な職人仕事のような会話だ。ロボットに乗せた老女を守りながら、機体そのものも守らなければならない。それが最前線の現実だった。

53年間暮らした家は、もうなかった

 老女はそのままケルベロスの背中に乗り、数時間をかけて安全地帯へと運ばれた。第3軍団の発表によれば、この4時間にわたる作戦で、老女のほかに3人の村人も避難させることができた。

 老女が53年間暮らしてきた家は、ロシア軍によって破壊されていたという。

 装甲車に乗り移った際、兵士の一人がこう言った。「これでようやく、みんな息ができる。神様、ありがとう」。ほんの短い一言だが、その安堵の重さは想像に難くない。

 なお今回の救出劇は、ウクライナ軍による無人機活用の一例に過ぎない。別の部隊では、補給物資を届けたドローンが帰還する際に、前線に取り残されていた猫と犬を乗せて戻ってきたという話も伝わっている。約12キロをドローンで旅したその2匹は、後に兵士たちに引き取られた。戦場における人間らしさ、とでも呼ぶべきものが、こういった報告から滲み出てくる。

 リマンはドネツ川沿いに位置し、「ドンバスの門」とも称される交通の要衝だ。2022年5月にロシア軍が占領し、その後ウクライナ軍が奪還。しかし2024年12月にはロシア軍が再び侵攻し、現在も支配権が曖昧なグレーゾーンに置かれている。その最前線で、一人の老女はロボットによって助けられたのだ。

参考:Metro、ほか

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