暑すぎて魚が茹で上がり、鳥が空から落ちる街 ― 世界で最も暑い都市の現実

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

 かつては「湾岸のマルセイユ」と称えられ、活気ある漁業と美しいビーチで人々を魅了した中東の大都市、クウェート。しかし今、その姿は一変した。気候変動という地球規模の課題が、この街を灼熱地獄へと変え、そこに住む人間と野生動物に深刻な影響を及ぼしている。

 空から鳥が力尽きて落ち、海では魚が茹で上がってしまうほどの猛烈な暑さ。これは遠い未来のSF話ではない。クウェートが直面している紛れもない現実なのだ。

54℃を記録した「灼熱都市」

 クウェートの夏は、もはや「暑い」という言葉では表現しきれないレベルに達している。2016年7月21日には、観測所で気温54℃を記録。これは地球上で観測された気温としては史上3番目の高さだ。近年ヨーロッパを襲った熱波「ケルベロス」でさえ、この記録には10℃も及ばない。

 2023年には、気温50℃超えが19回も観測されたが、専門家はこれがまだ序の口に過ぎないと警告する。今世紀末までには、クウェートの気温はさらに最大5.5℃上昇する可能性があると予測されているのだ。

 この異常な暑さは野生動物に壊滅的な打撃を与えている。猛烈な日差しを避ける場所もなく、鳥たちは空から次々と墜落し、湾ではタツノオトシゴが茹でられて死ぬという痛ましい光景が広がっている。コンクリートとアスファルトで覆われた都市開発が熱をさらに閉じ込め、事態を悪化させている。

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クウェート市 User:Deepak – photo taken by User:Deepak, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

エアコンなしでは生きられない日常と、夜に執り行われる葬儀

 人間の体温を13℃も上回る50℃という気温は、熱中症や心臓疾患のリスクを劇的に高める。このため、クウェートの人々の生活スタイルは大きく変化した。

 日中の耐え難い暑さを避けるため、葬儀を夜間に行うことが許可されるという、前代未聞の措置まで取られている。富裕層はエアコンが完備された自宅やオフィス、ショッピングモールに避難し、灼熱の屋外とは無縁の「涼しい楽園」で過ごす。ヤシの木が植えられ、ヨーロッパ風のブティックが並ぶ巨大な屋内商店街は、もはや人々の生活に不可欠なインフラとなっている。

 その代償は莫大な電力消費だ。2020年の調査では、クウェートの家庭における電力消費量の実に3分の2がエアコンの使用によるものだと判明した。涼しさを手に入れるため、エネルギーは湯水のように使われている。

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クウェートのショッピングモール Steve & Jem Copley – originally posted to Flickr as The Avenues – huge shopping mall, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

灼熱の路上に取り残される人々

 しかし、誰もが涼しい屋内で過ごせるわけではない。クウェートの人口の約7割を占めるのは、アラブ諸国や南・東南アジアから来た移民労働者たちだ。彼らの多くは建設業や家事サービスに従事し、灼熱の路上や公共バスでの移動を余儀なくされている。

 2023年のある研究によると、気候変動による熱関連の死亡リスクは、今世紀末までにクウェート国民全体で最大11.7%増加するのに対し、非クウェート国民(主に移民労働者)では最大15%も増加する可能性があるという。猛暑の影響は社会的に弱い立場にある人々により深刻な形で襲いかかっているのだ。

問われる国の姿勢と未来への警告

 皮肉なことに、クウェートは世界でも有数の二酸化炭素排出国であり、その量はバーレーンとカタールに次いで多い。近隣諸国が大幅な排出削減目標を掲げる中、クウェートがCOP26で発表した目標は、2035年までにわずか7.4%削減するという微々たるものだ。

 さらに政府は、冷房需要の増加により、2030年までにエネルギー需要が現在の3倍になると予測している。政府が電気代の大部分を補助しているため、国民に節電へのインセンティブが働きにくいという構造的な問題も、この状況に拍車をかけている。

 環境専門家は、このままでは洪水、干ばつ、砂嵐の頻発、生態系の破壊など、地球温暖化がもたらすさらに深刻な事態に直面するだろうと警鐘を鳴らす。

 魚が茹で上がり、鳥が空から落ちる街の現実は、地球全体の未来を映し出す、あまりにも厳しい鏡なのかもしれない。

参考:THE Mirror、ほか

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