もしメキシコ湾流が崩壊したら?世界各地で異常気象が頻発か… 科学者が警鐘
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映画『デイ・アフター・トゥモロー』を見たことがある人なら、メキシコ湾流が止まることで地球がどれほど劇的に変化するかを想像できるのではないだろうか。2004年に公開されたこの映画では、メキシコ湾流の崩壊によって巨大なスーパー・ストームが発生し、世界中で異常気象が連鎖する様子が描かれた。
もちろん、現実世界で映画のような急激な変化が起こることは考えにくい。しかし、イギリスの気象庁(Met Office)の研究者たちは、地球の海洋循環システムが弱まりつつあると警鐘を鳴らしている。
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メキシコ湾流とAMOCの関係
メキシコ湾流は、地球規模の海洋循環システム「大西洋子午面循環(AMOC)」の一部であり、いわば海のベルトコンベヤーのような役割を果たしている。この流れは、熱帯地域から温かい海水を北半球へ運び、ヨーロッパやアメリカ東海岸の気候を穏やかに保つ重要な働きをしている。
研究によると、AMOCの崩壊が今世紀中に起こる可能性は低いものの、確実に弱まっており、気候変動に大きな影響を与えるとされる。
AMOCが崩壊すると何が起こるのか?
気候科学者のジョナサン・ベイカー博士によると、AMOCが完全に停止すれば、北西ヨーロッパの気温は大幅に低下し、世界各地で異常気象が頻発する可能性がある。
「AMOCが崩壊すれば、北西ヨーロッパは極寒となり、気候パターンが大混乱に陥る。農作物の生産にも影響を与え、生態系全体が変化するだろう」と博士は語る。
また、AMOCの弱体化によって、以下のような影響が懸念されている。
気温の低下:ヨーロッパの冬は現在よりも数度寒くなり、カナダ北部のような気候になる可能性がある。
極端な天候の増加:強い冬の嵐や暴風雨が発生し、洪水や寒波による死者が増える恐れがある。
降水パターンの変化:熱帯地域の降雨帯が移動し、農業や水資源に深刻な影響を与える。
干ばつと飢饉のリスク:特に発展途上国では食糧生産が困難になり、数百万人規模の気候難民が発生する可能性がある。
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AMOCの変化をどう予測するか?
今回の研究では、気象庁のチームが34種類の気候モデルを使用し、温室効果ガスの増加や海面上昇がAMOCに与える影響を分析した。その結果、AMOCは確実に弱体化するものの、今世紀中に完全に崩壊する可能性は低いという結論に至った。
しかし、UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)のデイビッド・ソーナリー教授は、「AMOCの崩壊は、単に寒冷化を引き起こすだけでなく、異常気象を増加させる。寒波だけでなく暴風雨や洪水も増えるため、社会全体が影響を受ける」と指摘する。
AMOCが崩壊すれば、世界の気候は現在とは全く異なるものになる。しかし、研究によれば、南半球の強い風が深海から水を引き上げるポンプのような役割を果たし、AMOCをある程度維持しているため、すぐに崩壊することはないと考えられている。
それでも、気候変動が進めばAMOCの弱体化は避けられず、世界中の気候に影響を与えることは確実だ。エクセター大学の気候科学者ジェフ・ヴァリス教授も、「AMOCが崩壊しないからといって、気候変動の脅威が軽減されるわけではない」と警鐘を鳴らしている。
現在の研究では、AMOCの完全な崩壊は今世紀中には起こらないとされているが、その弱体化がもたらす影響はすでに現れ始めている。
映画のような世界的な大災害は避けられるかもしれないが、今後の気候変動による影響を軽視すべきではないだろう。極端な寒冷化、異常気象、農作物への打撃、さらには大規模な環境変化による社会不安——こうした未来が、ゆっくりと、しかし確実に迫っているのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
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