>  >  > SF映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』がバカすぎる

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不思議惑星キン・ザ・ザ≪デジタル・リマスター版≫』(キングレコード)

 ソ連で製作されたSF映画? タルコフスキーの『惑星ソラリス』を思い浮かべたあなた、恐らくその予感は見事に裏切られる。この『不思議惑星キン・ザ・ザ』という映画、設定から展開まで何もかもがイッちゃってる。超シュールかつ完全脱力系、ゆる~い雰囲気とキッチュさに茫然唖然すること請け合いの135分だ。

 確かに普段見慣れたハリウッドのSF大作や、巨匠たちが手がけた哲学的映像作品とは何もかもが違う。でも、ちょっと待ってほしい。彼の地では公開当時(1986年)に1570万人を動員したうえ、西側諸国が『スター・ウォーズ』に熱狂し「フォースと共に……」なんて言ってた頃、旧共産圏では「クー、クー、キュー!」(後述)と人々が挨拶を交わしちゃうくらい社会現象化したという。そして現代のロシアでも「クー」と話しかければ「クー」と返してもらえるという話もあるほど(!)、旧ソ連圏の人々に強烈なインパクトを残した “超重要作品”なのだ。いったい何が、人々をそこまで惹きつけるのか? 2月15日にキングレコードからデジタルリマスター版のブルーレイ&DVDが発売される機会に合わせ、そのカルト的な人気の秘密について考えてみよう。


■ストーリー

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©Mosfilm Cinema Concern, 1986

 時は旧ソ連時代、冬のモスクワ。建築技師マシコフ(おじさん)は、帰宅するなり妻に頼まれたマカロニの買い出しに街へと繰り出す。そこで「あそこに自分のことを宇宙人だという男がいる」と助けを求めてきたのが学生ゲバダン(バイオリン弾き)だ。まるで浮浪者のような姿の男は「自分の星に帰りたい」と2人に話すが、もちろんマシコフは信じず、完全に不審者と見なす。そして、男が持っていた“空間移動装置”のボタンを押してしまう――と次の瞬間、2人は砂漠のど真ん中に瞬間ワープ!


■ハチャメチャすぎる設定!

 そう、2人がワープしてしまったのは、キン・ザ・ザ星雲にあるプリュクという砂漠の星だった。ここには地球人ソックリの宇宙人たちが暮らしているが、見た目とは裏腹に、その性質は大きく異なる。彼らが話す言葉は「キュー」という公言可能な罵声語と、それ以外のすべてを表す「クー」という2語だけ。つまり、挨拶も感謝も細かな意思疎通も、基本的に「クー」だけで済ませてしまうのだ。

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©Mosfilm Cinema Concern, 1986

 そして、やたらと厳しい身分制度。プリュクに暮らす宇宙人は、みんな同じに見えても実は2種類存在し、識別機が緑色を示せば「パッツ人」、オレンジ色なら「チャトル人」と区別されている。身分の低いパッツ人は、鼻に小さな鈴をつけ、チャトル人に会えば変なポーズで挨拶しなければならないし、チャトル人もステテコの色で階級分けされている。それに加えて、警察のような役割を担う(いいかげんな)権力者「エツィロップ」の存在――。

 またプリュクでは、なぜかマッチ(の頭薬)が「カツェ」と呼ばれる超貴重品で、金のように扱われている。プリュク人は“マッチ命”の連中ばかりで、やたら礼儀にうるさい割に、マッチにはとてつもなく意地汚い。

 さらに『マッドマックス』を思わせる砂漠風景と宇宙人たちの薄汚さ、チープでレトロ感あふれる宇宙船をはじめとするセット……と、これらすべてが入り混じり「クー、クー」「キュー、キュー」叫びながらドタバタ劇を繰り広げる。かと思えば、いきなり宇宙人たちもロシア語を話せることが判明したりと、細かいことにこだわっているのかいないのか、どこまで本気なのか鑑賞者も困惑するほど、とにかくあらゆるSF作品の文体から“ズレて”いるのだ。

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