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全ロシア人を「クークー」言わせたSF映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』がバカすぎて深読みするレベル！

2017.02.15 19:00

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全ロシア人を「クークー」言わせたSF映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』がバカすぎて深読みするレベル！の画像4

©Mosfilm Cinema Concern, 1986

■作品に散りばめられた数々のメタファー

　もしかして、単にウケ狙いのおバカ映画だったのか――？ここまで悪口雑言を並べ立てるかのような紹介になってしまったが、それは決してこの映画の短所ではない。いや、むしろこのズレた感じが『不思議惑星キン・ザ・ザ』の魅力なのだ。あなたの感覚にハマれば、きっと生涯にわたって見続けるほど中毒になるだろう。

　しかしもう一点、この映画の重要な意義について説明しておかなければならない。じっくり鑑賞すればするほどに、そして時代背景を知れば知るほどに、作品に込められた製作者の深い意図が垣間見えるのだ。実は『不思議惑星キン・ザ・ザ』には、鋭い体制批判と皮肉、資本主義社会への風刺、さらには人類への希望までもが至るところに散りばめられている。

全ロシア人を「クークー」言わせたSF映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』がバカすぎて深読みするレベル！の画像5

©Mosfilm Cinema Concern, 1986

　例えば、賄賂で簡単に買収されてしまうエツィロップは、「POLICE（警察）」の逆さ読み。金にがめつく、利益のために人を騙すことも厭わない連中が登場するのは、現実のソ連社会への痛烈な批判にほかならない。また、滑稽な身分制度、社会主義国のソ連で最も安い製品だったマッチが超高級品として扱われる経済、主人公の2人が最初に宇宙人と出会った時に「資本主義国の人間だ」と勘違いしたのも、体制へのこれ以上ない皮肉といえる。さらに、散々な目に遭わされても、騙した人間を許して助けようとする主人公たちの姿には、人間としての良心や普遍的な愛のかたちを見出すことができる。

　加えて、決して互いを見捨てることがない主人公たちだが、マシコフはロシア人、ゲデバンは当時ソ連の構成国だったジョージア（旧呼称：グルジア）出身という設定。そんな2人が、プリュクを脱出して一時アルファ星に到着した時、「目障りな他星人は不幸な存在だ」と決めつけ「異世界の人間には去ってもらう」と神のように振る舞うアルファ星人に反発するシーンも見逃せない。これらはすべて、ロシアとジョージアの歴史的対立、冷戦期における西側諸国との関係などを象徴する設定なのだ。ちなみに、監督のゲオルギー・ダネリヤ自身もジョージア出身であるなど、製作陣にも多民族国家だったソ連の姿が反映されている。

予告編　「YouTube」より

　思い返せば、ソ連で育まれた芸術は実に特殊だ。正面からの体制批判が自殺行為となる抑圧された環境下にあって、ショスタコーヴィチ（作曲家）など多くの芸術家たちは、表向きには体制側に従順な姿勢を見せつつ、作品内で密かな抵抗を試みていた。そこに通じる精神を『不思議惑星キン・ザ・ザ』からも十分に感じ取ることができる。このような映画が、5年後には崩壊することになる末期のソ連で生まれ、検閲をかいくぐって大ヒットを記録した――その事実だけでも、身震いするような感慨を覚えないだろうか。クー!!

　ハリウッド作品のように派手な映像技術もなければ、科学考証もなし。セックスも残酷描写も一切含まれない代わりに、シュールすぎる設定とレトロ＆脱力感で満ちたディストピアコメディーの金字塔『不思議惑星キン・ザ・ザ』。おバカなようでいて、実は緻密に構成された唯一無二のSF世界に、あなたもぜひ浸ってみてほしい。

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地球よ、おまえは遠かった。
ファンが愛してやまない変な映画がよみがえった！クー！！
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