超新星爆発の実態が判明か?地球から約1,150万光年離れた銀河M82のIa型超新星のガンマ線を観測!
■Ia型超新星のガンマ線を観測した千載一遇の機会
Ia型超新星では、その強力な核爆発によって、大量の不安定原子核が生成され、宇宙空間に飛散する。その飛び散った不安定原子核が放射性崩壊することでガンマ線が発生するのだ。今回観測できたのは、このIa型超新星からのガンマ線だ。
観測したインテグラル宇宙望遠鏡はガンマ線観測用の人工衛星だが、これまで超新星を観測する機会がなかった。Ia型超新星は、宇宙全体では頻繁に発生していると考えられているが、銀河単位では数百年に一度のものだ。それが今年の1月21日、ロンドン大学天文台での観測実習中に運良く発見されたのである。
「SN2014」と名前を付けられたその超新星はさらに幸運なことに、地球から約1,150万光年離れた銀河M82(おおぐま座)にあり、ここ数十年で一番近いところで発生した超新星であった。ドイツのマックス・プランク天体物理学研究所の主任研究員であるユージン・チュラゾフ氏が「我々は10年以上の時間をかけて、千載一遇の機会に直面できました」と、「Daily Mail」の取材に語るように、ガンマ線を観測する最高のチャンスが訪れたのだ。
Ia型超新星は理論的に、大爆発によって不安定原子核であるニッケルを大量に放出すると見られていた。そのニッケルも数日で放射性崩壊してコバルトへと変容し、さらに100日ほどの時間をかけて安定的な鉄へと崩壊していくという予想だ。事実、コバルトの崩壊を示すデータが、爆発から50日後には予想された通りに得られた。
■宇宙解明の鍵を握るガンマ線観測
しかし、予期せぬ観測結果もあった。マックス・プランク地球外物理学研究所のローランド・ディール氏らのグループは、爆発の15日後にもニッケルの崩壊から生まれたガンマ線を検出していたことがわかった。これまでIa型超新星の反応については、星の中心から起こると考えられていたため、爆発直後では、ガンマ線は混み合った周りの物質の中に埋もれてしまい、検出できないはずであった。しかし、予想外に早く検出されたガンマ線にディール氏は「我々はこの信号に困惑しました、何人かが間違いだと言ったほどです」と、その意外さを話している。
その後グループ内で議論を重ね、白色矮星の赤道面上に伴星から出たベルト状のガスが流れ込み、その表面に溜まった物質の中から核反応が始まるというモデルを構築した。その表面での反応が少量のニッケルを生成し、さらには白色矮星の中心の核反応の引き金となるという考えだ。まだ他の超新星を観測できていないため現時点で断定はできないが、新たな可能性ができたことは間違いない。
たかが発火地点の違い、そう思ってしまいそうだが、Ia型超新星はその成り立ち上、光の大きさが一定であることから「標準光源」として、宇宙上での距離を計測する際に利用される重要なものである。今回の発見により、標準光源としての有用性に影響があるのかなど、検証すべき課題が増えたことは確かだ。
今回のように、検出が難しいガンマ線を観測できれば、もっと宇宙の謎が解明されていくかもしれない。日本でも、2015年に次世代の国際X線天文衛星である「ASTRO-H」の打ち上げが予定されているが、それによりまた新たな発見が続々と出てくることに期待しても良さそうだ。
(文=杉田彬)
参考:「Daily Mail」ほか
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊超新星爆発の実態が判明か?地球から約1,150万光年離れた銀河M82のIa型超新星のガンマ線を観測!のページです。NASA、杉田彬、研究、天文、星、ESA、ASTRO-H、白色矮星、超新星爆発などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで