コレが映画愛だ!! 閉館目前だった名画座を救ったタランティーノ、自らが上映をプログラム!
かつて映画は娯楽の王様と呼ばれていた。華やかなスター達、壮大なストーリー、迫力ある映像など、暗闇の中で映し出される幻影の世界に観客は大いに魅了された。そんな映画特有の体験を与えてくれる場所である映画館だが、近年は観客動員数が減少傾向にある。とりわけ個人経営の老舗単館や名画座などは十分に観客を動員できず、日本でも、恵比寿ガーデンシネマ、シアターN渋谷、銀座テアトルシネマ、吉祥寺バウスシアターなどが閉館した。
テクノロジーの発展による鑑賞方法の多様化や、大規模なシネコンの台頭などによる状況の変化は、映画の都ハリウッドにおいても例外ではない。1950年代にオープンし、2本立てリバイバル上映専門の老舗映画館「ニュー・ビバリー(New Beverly Cinema)」も、先代オーナー亡き後、経営に苦しみ存続の危機に窮していた。
■名画座、立退きの危機を救ったタランティーノ
そこへ救済に買って出たのが映画監督のクエンティン・タランティーノ。自身が愛する「グラインドハウス」映画館(B級映画を2~3本立て続けに上映)を残すために、2007年にニュー・ビバリーが賃貸するビルごと買い取り、新たなオーナー兼スポンサーとなった。先代オーナーの息子と家族に実質的な運営を任せつつ、「自分が生きている限り、または金持ちであり続ける限り、ニュー・ビバリーは存続し続けるし、35mmフィルムで映画を2本立てで上映する事を誓う」と宣言した。
さらには今月になって、今後はタランティーノ自らが上映する映画のプログラムに携わり、自身の35mmフィルムのコレクションを提供する事も発表した。また映画館内設備の改善にも取りかかり、6トラックのステレオサウンドシステムや16mmフィルムのプロジェクターも導入するとのこと。
上映する作品もエクスプロイテーション系にのみならず、可能な限りあらゆるジャンルの映画を2本立てでおこなうとしており、タランティーノの監督としての素養でもある雑多で多様な嗜好が見せ所となりそうだ。西部劇にサムライ映画、ヨーロッパの芸術作品にホラーやエクスプロイテーションなど、幅広いジャンルの映画が期待できる。また毎週金曜日の深夜は、タランティーノ作品を上映するとのことで、ファンサービスも怠らないのはサスガとしか言いようがない。
日本の芸能界以上に生き残りが厳しいアメリカのエンタメ業界で、偽善的なスタンドプレーを用いて自身のプロモーションを行うセレブも多いが、純粋な映画愛のために一つの単館映画館を救ったタランティーノは、昔も今も変わらない愛すべき映画バカ。彼の作品群からも自然とその愛情が伝わってくる事が、魅力の一つにもなっているのだろう。
ニュー・ビバリーもタランティーノという心強い味方を得た事により、これまで以上にレアな上映セレクトでロサンゼルスの映画ファンから支持され続けるであろう。筆者個人もジョン・カサベテス監督の作品群をフィルムで鑑賞できる機会を得たり、大林宣彦監督の「HOUSE ハウス」を見て戸惑いつつ大笑いしたり、お忍びで来ていた俳優のティム・ロスに握手してもらったり…と、思い入れがあるこの映画館の繁栄と、1日でも長い存続を願って、10月に再開する次の上映に出かけようと思う。
(文=Mighty Nice)
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