「オカルトと愛は同じ。ないと考えた方が、純度が高くなる」伊藤ガビン・インタビュー

トカナ動画コンテスト審査員・特別インタビュー!! 伊藤ガビン先生:後編】

 本や雑誌のみならず、ゲームや映像制作、デザイン、展覧会ほかイベントの構成など、ジャンルにとらわれることなく世の中に面白いものを発信し続ける伊藤ガビン氏。前回は、自身の作品の制作過程や若手について「才能」を中心に話を伺ったが、今回はトカナ読者も大好きな「オカルト」について、そして「トカナ動画コンテストの審査ポイント」についてお話を伺った。


■不思議なこと何もはないと考えたほうが楽しい

「オカルトと愛は同じ。ないと考えた方が、純度が高くなる」伊藤ガビン・インタビューの画像1伊藤ガビン先生

――これまでのキャリアや生きてきたなかで、不思議な体験はありますか?

伊藤氏(以下、伊藤) 不思議体験はないですね。怖いから「ない」と思いたいんです。基本的に「不思議なことは何もない」って思いたい。もっと極端なことを言うと「愛はない」とか、そういう“目に見えないことは全部ない”! というスタンスで生きていきたいと思っています。だけど、それでも否定しようのないことがたまには起こるんですよねえ。そういうものは認めざるを得ない。怖いけど、仕方ない。そういうスタンスです。

 世の中は不思議に溢れている! っていうスタンスだと、ちょっとした偶然にも「不思議」や「必然」を感じてしまうでしょう? それは「不思議」の純度が低いよね。

――純度、ですか。

伊藤 偶然にしちゃあまりにも重なり過ぎてるぞとか、この人に会って理由は分らないけどドキドキが止まらなくてダメです、ボク…みたいなこととかがあって、初めて理屈では説明できない「不思議」に出会ったと思いたい。そのためには、不思議なことはない、と思っている方がいい。不思議に溢れてると思っていると、単なる偶然も全部不思議や奇跡に思えてしまうから

「オカルトと愛は同じ。ないと考えた方が、純度が高くなる」伊藤ガビン・インタビューの画像2SECOND SKIN FRIENDS 1 designed by NNNNY / for iPhone 4S/au by KDDI伊藤ガビン先生と、グラフィックデザイナーのいすたえこ、イラストレーターの萩原慶、プログラマーの林洋介などからなるデザインチームによるスマホケース。その他の種類も、オカルトモチーフなのだが不思議とカッコイイ!!

――オカルトのビリーバーの方達って、朝、車のナンバーで11っていう数字を見ると「今日は凄い日だわ、天使が降りてきているわ」っていうような解釈になってしまうんですよね。

伊藤 それもわかるんですけどね。僕、4月13日生まれなんです。「4」と「13」って凄く縁起が悪いじゃないですか。だから、縁起が悪いものを「悪い」と思っていると、自分の居場所がなくなるというか。だから逆に、縁起の悪いものってすごく好きなんですよ。縁起が悪い数字とか不吉なものを見ると、あー、いいなーって思う(笑)。だからそういうもの見ると嬉しいって思ってしまう。いいように利用できる偶然は利用したい気持ちはある。でもまあ、偶然だよね。

――クリエイティブとオカルトは似ているように思えるのですが、ガビンさんはどう思われますか?

伊藤 何でもいいんだけれど、とっかかりがあったほうが「何か」を捕まえやすい。その「何か」っていうのを感じる瞬間としてオカルト的なものっていうのはあるのかもしれないですね。
 オカルトっていうのは基本的に解決しないってところがいいじゃないですか。わからないからこそ、オカルトとしてパワーを持ちえる
 たとえばUMAで言うと、ツチノコを捕まえたらきっと全然面白くないですよね。普通に太った爬虫類の種類が1つ増えたってだけの話になっちゃうじゃないですか。だから、ツチノコは捕まらないからいつまでも面白い。オカルトの語源は隠されているってことだと思うけれど、隠されている、わからない、ってことがすごく重要なんだと思います。みんなそれぞれ、色々な形で“わからないこと”が必要なんじゃないかと思う。それがないと生きていけないというか。たとえば、愛とか。結局、人生が無目的だってことがバレちゃいけないわけですよ。無目的だってことがバレると多くの人は生きていくことが辛くなってしまうかもしれない。

――人生が無目的?

伊藤 「人生は無目的で、自分が生きていることに完全に意味がない」と思うことに対して、僕にはロマンティックな思いがあるわけです。凄く言葉にはしづらいんだけど、今日こうやって会って話していることが、偶然なのか必然なのかってどっちとも取りようがある。でも、完全に偶然だと思いたいんですよね。これはあまりうまく言えた試しがないんだけれど、何も意味がないということに過剰にロマンティックな思いがあるんですよ。

――なんにも意味がないっていうことは、これまでガビンさんが作ってこられたもののベースにあるような気はします。

伊藤 それはすごく強くあると思います。人生に意味はない人生に意味はないと言い聞かせて生きてるところはある。
でも、もしかするとそれもまた自分のバランス感覚が生み出している人生観なのかもしれないです。
いまの世の中が、人生に意味があるべき、と思うようにできているからその反動として「意味がない」と、言いたいのかもしれません。僕自身は「人生に意味がない」と思うことでラクに生きれているところがあるのだけれど、人生に意味がないと辛いと感じる人も多いのでしょうね。


■とにかく驚くようなもので感情を揺り動かされたい

――このたびTOCANA映像コンテストの審査員を引き受けていただくわけですが、エントリーされる方に、何かアドバイスを頂けますか。

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